「私たちは、横須賀で1番エコなマルシェを作ってきました」
10あった受賞団体のなかで2枠だけ設けられた授賞式でのスピーチで、みうらんは15分にわたって熱い思いを語った。エコルシェでやってきたこと、なぜエコなマルシェをやっているのか、これからどんなことがしたいのか。市長を始め、横須賀の企業やさまざまな人が集まる会場で、客席をしっかりと見ながらプレゼンした。
「いつか常設店舗を持ちたい」という目標も含めたスピーチを聞き、会場でふたりに声をかけたのが、湘南菱油株式会社の大庭社長だった。湘南菱油は、湘南を中心に13店舗をもつ、地域に根付いたガソリンスタンドの会社だ。2035年にガソリン車の新車販売禁止が決まっていることもあり、同社としても新たな取り組みを模索しているところだったという。
「日の出町にあるガソリンスタンドの待合室を使って、お店をやりませんか?」
当初は定期的なマルシェの開催場所として提案した大庭社長だったが、ふたりの思いを聞いて、常設店舗として社内稟議を通してくれた。マルシェ初開催からたったの8カ月で、エコルシェはお店を構えることになったのだ。
店名についている「5302(ゴーサンゼロニー)」は、語呂合わせで「ゴミゼロに」と読むことができるのと同時に、ガソリン車の新車販売が禁止となる2035年を逆さまにした数字でもある。有限な資源である石油エネルギーを扱うガソリンスタンドとしても、この地球に住む私たち一人ひとりとしても、今なにができるのかを逆算して考えてみよう、という意味が込められている。
環境問題について語られる時、車やガソリンは悪者にされがちだ。エコをテーマに活動してきたふたりにとって、ガソリンスタンドでお店を開くことに抵抗はなかったのだろうか。
「大庭社長の『自分たちはエコとは対極の事業をやってるけれど、今すぐにはなくせないほどに人々の生活に根付いている。だからこそ、私たちがなにをするかが重要で、できることをやっていきたい』という言葉にすごく共感しました。『自分たちは環境に良いことしています』というグリーンウォッシュ(環境配慮をしているように装うこと、上辺だけの環境訴求)な企業より、売ってるものはエコではないんだけれども、心からこういう活動が大事だと思っている、という場所がいいなと思ったんです」
そう話してくれたみうらんに続いて、彩子さんも頷いた。
「特定の業界が悪なんじゃなくて、やっぱりそれぞれの立場でできることがあるし、それをやっていくことが大事。私たち自身も『プラスチックは悪だから、なくさないといけない!』とは思っていなくて、使い方や頻度の話なんですよね」