ふたりはそれまで、特別に仲の良い関係ではなかったという。
「同じ助産院で子どもを産んだママ友っていうだけ。お互いに敬語だったしね」
みうらんは、なぜ単なる「ママ友」にパートナーとして声をかけたのか。その答えは、もうひとりの店主、彩子さんの人生にある。彩子さんが最初に環境問題に興味を持ったのは、小学生の時。
「10歳くらいかな、テレビでおじさんが『そのうち、たくさん雨が降る場所や、ものすごく暑い場所とかが出てきます』って言っていたのが衝撃的で。そんなことあるかいな、って思っていたんだけど、最近のゲリラ豪雨や異常気象はまさにそうですよね。そのテレビ番組きっかけに、酸性雨や動物の絶滅などの話にすごく興味を持ったんです」
学生時代にはお小遣いでエコバッグを買い、コンビニで「袋いりません」と言うような女子高生に。フェアトレード商品を扱う企業への就職も考えたことはあったが、結局は地元である横須賀の病院に人事などのバックオフィス職員として就職した。マイバッグやマイボトルといった地道な活動は細々とおこなってきた彩子さんは、近所のお店で「ストローのいらない直飲みの人」と覚えられているそうだ。
「環境問題への興味はあったけれど、毎日働いて子どもを育てていると、そこまで気が回らなくなってくるんですよね。冷凍食品にも頼るし、紙オムツだってたくさん使う。時間がないなかでエコな暮らしをしていくことの難しさを感じていました」
そこで彩子さんがふと手に取ったのが、『ゼロ・ウェイスト・ホーム ーごみを出さないシンプルな暮らし』という、カリフォルニア在住の女性が書いた本。4人家族にも関わらず、1年間で片手に収まる小瓶分しかゴミが出ないという彼女のライフスタイルに、彩子さんは衝撃を受けた。
「日々の暮らしのなかで、こんなにもゴミが減らせるんだ! って。しかもエコなのに楽しくてラクな方法が書いてある。我慢・節約・地味……みたいなエコの概念がガラッと変わったんですよね。こんなにラクだったりお得だったりするなら、もっとたくさんの人にやってもらえるんじゃないかなと思うようになりました」
その想いを胸に、彩子さんはブログを書き始めた。働きながら子ども3人を育てる自分が暮らしのなかで見つけた、小さなエコのノウハウをシェアすることで、少しでも多くの人が暮らしにエコを取り入れられたら。
「自分でできることに限度があるなら、ほかの人にもやってもらえばいいって思ったのもあります。同じようにやってくれる人が増えれば、私の手が増えるようなものじゃんって思って」
日々の暮らしでエコを意識すると、買い物で出るゴミも気になってくる。数年前に新聞で知った、ベルリンの「無包装スーパー」に感銘を受けたことが頭をよぎった。
「横須賀にゼロウェイスト&ローカルプロダクツのお店を作りたい!」
子どもを産んで数ヶ月後、助産院でのランチ会で、彩子さんはそう宣言していた。そして、そこにいたのがみうらんだったのだ。
「一緒にエコなマルシェやらない?」
みうらんからのマルシェの誘いに、彩子さんは乗った。