未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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横須賀のガソリンスタンドから始まるエコな挑戦 マイ容器に「地元への愛」を詰め込んで

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.227 |10 February 2023
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#3エコなマルシェの始まり

2019年の秋。ふたりめの出産を終えて育休中だったみうらんが、仕事復帰について悩んでいたところから話は始まる。それまでウェディングプランナーとして、数々の結婚式を手がけてきたみうらんは、休日や夜が主な業務時間となるウェディング業界で働くことと育児の両立に不安を覚えていた。

同じ頃、地域のママたちと一緒にコミュニティ『Oppapamamaile(通称、オパイル)』を結成してイベントや情報発信をするなかで、ハンドメイド作品の販売をするママたちを見ていたこともあり「私もなにか作って、手に職をつけることができないだろうか」と考え始めたという。

そこで出会ったのが、オーストラリア在住の日本人が立ち上げた「KoKeBee」というブランドだった。彼らが取り扱う「みつろうエコラップ」は、布にみつろう(蜜蝋)を染み込ませ、ラップのように使うことができる商品のこと。この「みつろうエコラップ」を作り、広めていく『プラスチックフリー生活アドバイザー』を募集していたのだ。

「なぜだかわからないけど、これだ! と思って。当時、周りで誰も作っていなかったし、知っている人も少なかった。環境問題についての意識も高まっていると感じていたので、これなら仕事になるかもしれない、と思って申し込みました」

この発言からもわかるとおり、当時のみうらんのエコについての知識は、ほぼゼロ。「ジュースの紙パックとストローの分別すら、ちゃんとしていなかった」と振り返る。しかし、『プラスチックフリー生活アドバイザー』になったことをきっかけに、世界の見え方が一転した。

「勉強していくと、プラスチックの大量消費がなぜ良くないのかが見えてきました。海の汚染、魚がプラスチックを食べるとどうなるか、それが私たちにどんな影響があるのか。多くの課題を知って、単純に『これは減らした方がいいな』って。子どもを産んだことで、未来がすごくリアルに感じるようになったことも大きいです。この子たちの未来のために、できることをやるしかない、と思いました」

当初の予定どおり、みつろうエコラップを自ら作って販売したり、ワークショップを開いたりして、環境問題について発信し始めた。ところが、ワークショップの申し込みはなかなか増えず、それ以前にエコラップについて知っている人がいなかった。市販のラップではなく、なぜエコラップなのか。そこから伝えなければと思いついたのが、「なるべくゴミが出ないマルシェ」だ。

「やっぱり私は“場づくり”なんですよね、ウェディングプランナーの時から。物を売るより、場を作る方を本能的にやっちゃうんだと思います。手に職をつけるためにエコラップを売りたくて アドバイザーになったのに、結局マルシェがやりたくなっちゃって」

2021年2月、構想を練ってきたマルシェを本格的に立ち上げようと、みうらんはママ友だった彩子さんのもとを訪れた。

「一緒にエコなマルシェやらない?」

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