話を聞きながら驚いたのは、ふたりの行動力とスピード感だ。次から次へと行動に移していくふたりの快進撃は、聞いているだけで人をわくわくさせる力がある。
「ゴミの出ないマルシェ」をやると決めた3日後、みうらんは会場となるマゼラン湘南佐島に来ていた。相模湾を望む高台の上に建てられたリゾート地のような場所で、レストランやブックカフェ、フィットネスジムなどを利用することができる施設だ。「マルシェをやるならマゼランで!」と考えていたことから、すぐに打診、見事その日のうちに月に一度の開催を決定した。
そして、2ヶ月後の2021年4月、横須賀で1番エコなマルシェとして「エコルシェ横須賀」が開催された。みうらんがみつろうエコラップを販売し、彩子さんが個人的におこなっていたパーソナルカラー・骨格診断のブースを開いた。加えて、知り合いの会社のサステナブルな商品を預かって代わりに販売するブースと、横須賀の野菜販売コーナー。当日の出店者は、ほとんどが自分たちだった。
「お客さんもほとんどが自分たちの知り合い。あとはインスタグラムを見てきてくれた人や、彩子さんのパーソナルカラー診断を受けに来た人もいました」
初回こそ知り合いばかりだったが、そこからはインスタグラムの発信などを見て、月を追うごとにお客さんが増えてきた。出店者のほうも、焼き菓子屋さん、農家さん、アップサイクルアクセサリーの販売やワークショップなど、回を重ねるごとに申し込みが増えていったという。最初の開催から1年弱、最近では会場のキャパを超える出店申込がある月も出てきた。
「最初はお客さんとして来た人が『実は私もこういうものを作ってて、出店したいんです』と声をかけてくれます。エコなマルシェってどういうこと? と思って様子を見に来てみたらすごく楽しかったから、と言ってもらえることが多いですね」
“ゴミを出さないマルシェ”と銘打っているエコルシェだからこそ、出店者さんが「どうやってゴミを出さずに売ればいいんだろう」と考えるきっかけになってもらえるだけでもいい、とふたりは話す。
「普段はお菓子を個包装しているお菓子屋さんも、エコルシェではパッケージフリーで並べてもらって、マイ容器での買い物に変えてもらいました。最近は出店者さんのほうから『個包装は準備が大変だし、結露しちゃうし。マルシェはパッケージフリーがいいですね』って言われたんです。1年、2年でこんなにも意識が変わるんだ! って感動しました。出店者さんのなかで『パッケージフリーでもいいんだ』って気づきがあったことが嬉しかったですね」
それはお客さん側も同じで、マイ容器での買い物を体験すると『袋がなくてもいいんだ』と改めて気づくことができる。ふたりにとっては、その“気づき”が売上よりも重要なものだ。
「例えば、『プラスチックを紙に変えよう』みたいなことって、結局は森林伐採などのほかの問題につながっていたりするので、結局、一番いいのは“減らす”ことだなと思うんですよね。ストローを紙に変えてもいいけど、そもそもカップから直接飲めばストロー自体いらないよね、みたいな」
ビニール袋が有料化されて「ビニール袋をもらわない代わりにエコバッグが大量にある」という皮肉な現象を耳にすることも増えたが、まさに使う人の考え方が変わらなければ、素材が変わるだけで同じことが起きてしまう。
「私たちは、商品を買ってもらうことで生活を変えてほしいのではなくて、ここでの販売・買い物体験がちょっとした暮らしや意識の変化のきっかけになったらと思っています」
月に一度のエコルシェ横須賀の開催に加えて、徐々に横須賀市内のイベントに出張出店し始めたふたり。地元のメディアなどに取り上げられることも増え、それと比例してマルシェに来てくれる人も多くなった。そして、横須賀市が募集した「いいね★横須賀エコ活動賞」で「エコルシェ推進賞」を受賞したことが、さらに大きな追い風となる。