思いがけず富山に延泊することになった翌日、私は射水市にある「富山モスク」の代表を務めるカーン・ナディームさんを訪ねることにした。カーンさんも国道8号線で中古車販売業を営む在日歴の長いパキスタン人。自動車輸出業も手掛けているが、地元にも多数の顧客を持ち、現在は国内で自動車販売を手掛けている。彼によれば、射水市周辺で500人近くのパキスタン人が、半径10キロメートル以内の地域に肩を寄せ合って暮らしているそうだ。彼らの生活圏には仕事があり、故郷の味を提供するレストランが軒を連ね、ハラールフードを扱うコンビニがあり、そして祈りの場もあるという。このエリアに移住した当初は地域社会との軋轢もあったが、地域の自治会に入会したり、彼らの子どもたちを地元の公立校に通わせるなどして徐々に日本人社会に溶け込んでいった。カーンさんは言った。
「すべての人間は兄弟。それがアッラーの教えです」