未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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富山にあるパキスタン 「イミズスタン」で出会ったもの

文= Numa
写真= Numa
未知の細道 No.225 |16 January 2023
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#3ハイレベルなカレー店が集まる町

「Al Barka」のパキスタン料理。どれも本場カラチの味を忠実に再現したものばかり

というわけで私は、本場パキスタンの味を求めてやってきた。2019年にオープンしてまたたく間に人気店となった「Al Baraka」だ。気さくな店主のミスバ・ウル・イスラムさんに辛いものが大好きと伝えると「マトン・カライ」という羊肉のスパイス煮を勧めてくれた。

居抜き物件をそのまま使うレストランが多い中で、「Al Bataka」はシンプルながらインテリアにもこだわり、異国感を演出している。

先に着席していたカップルがやたらと「美味しい!」を連発する。とても幸せそうに食事していたので、思わず話しかけてみた。

「イミズスタンには10年以上通っています。むかしは日本人が少なくてムスリム(イスラム教徒)ばかり。アウェー感がものすごかったです(笑)」

射水市に住んでいるというふたり。奥様はいわゆるカレーライスが苦手だったのが、イミズスタンでスパイスカレーの虜になったそうだ。おふたりいわく「ここは新しいレストランながら、ガチなカラチ(パキスタン南部の都市)料理が味わえる貴重なお店」とのこと。普段はいくつかあるお気に入りの店を回って、パキスタン各地の味覚を楽しんでいるそうだ。「射水市民で本当よかった!」という言葉を聞いて、私は心の底から、彼らのことが羨ましくなった。

「Al Baraka」のチキン・カライと香り高いチャパティ。本場の味を楽しみたければオーダー時に「パキスタンの味で」と念を押しとておくと確実。

オーダーしたマトン・カライがチャパティとともに運ばれてきた。薄くカリッと焼かれた全粒粉パンの一種であるロティに、カレーをたっぷりつけて口に運ぶ。炒め合わせた羊肉と香味野菜に新鮮な自家製マサラが合わさった魔法の味にガツンとやられ、私は店を出るまで「ウ、ウマい」以外の言葉を発することができなかった。

2010年代前半、SNSの普及も相まって、カレー愛好家たちが徐々に射水市に注目するようになった。在日パキスタン人は飲食業に新たなビジネスチャンスを見い出し、カレー店の新規出店が相次いだ。2015年ごろ、地元在住のカレーブロガー「カレー探偵やみちゃん」が年を追うごとに増える現地系カレー店を総称して「イミズスタン」と名づけると、以降、異国情緒たっぷりのマサラ体験ができるエリアとしてさらに評判を呼び、各店舗とも日本人客で賑わうようになった。

「Al Baraka」は以前もその前も別のカレー屋さんだった。群雄割拠のイミズスタンは店舗の入れ替わりも早い。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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