人間界には「天は二物を与えず」という言葉があるけど、アハルテケは身体能力も優れている。そのうえとても賢く、馬のことをよく知る人はみな感嘆するそう。
「しっかりと自分の意志を持っていて、意に沿わないことをしようとするとテコでも動きません。運動させようと思って私が馬房に呼びに行っても、気が乗らない時には隅の方に隠れていたりします(笑)。だから頑固だとか扱いづらいと言われることもあるんですけど、アハルテケは本当に人間との結びつきを深く感じさせてくれる馬だと思います。放牧している時、もう帰るよって声をかけると駆け寄ってくるんですよ」
長谷川さんに馬房を案内してもらった時、一頭、一頭の名前を呼び優しく撫でる姿を見て、溢れるような愛情を感じた。また、それに応えるように長谷川さんに鼻を寄せるアハルテケから、確かな信頼が見えた。「私にとって子どもみたいなものですね」と長谷川さん。
ほんの6年前、「夢の馬」と憧れていたアハルテケを、自分の牧場で12頭も飼育しているというのは想像もしなかった人生だろう。しかし、まだまだ立ち止まるつもりはない。
目標は、あと10年で30頭。
50歳で乗馬を始め、60代で乗馬クラブを開き、70代で牧場を経営する。かつて4128キロを84日で走った記録を持つアハルテケを彷彿させるそのバイタリティできっと、10年後には牧場が黄金色に染まっているだろう。