長谷川さんが馬と触れ合うようになったのは、今からおよそ20年前だった。
「50歳の時に体調を崩して、お医者さんから『運動してください』と言われたんです。それで通い始めたスポーツジムに乗馬クラブのチラシがあって、乗馬は運動になると書かれていました。私は運動が苦手だから、『そうか、馬に乗ればいいんだ!』と思って入会しました」
乗馬クラブに通い始めてからあっという間に夢中になり、競技会にも出場するようになった。55、56歳の時に競技会デビューしたというから、その間によほど腕を磨いたのだろう。ただ、競技会に出てみると、その会場にいる馬たちがあまり楽しそうに見えなかったそうで、「もっと馬が幸せに過ごせる場所が欲しい」と感じたそうだ。
思い立ったら走り出してしまう長谷川さんは、「それなら自分で作ればいい」と方々を駆け回り、2008年に「NPO法人 馬文化浸透委員会」を設立。翌年には、引退した競走馬などを引き取り、鞭や拍車(ブーツのかかと部分に装着する金属製の道具)に頼らないことを心がけた馬にやさしい乗馬クラブを浜松で立ち上げた。
「馬に乗って外を走ったり、海岸を走ったりする時に、自分が馬なのか、馬が自分なのかわからなくなる瞬間があって、それも通り越すと馬も自分も存在しなくて、風になって走っているような感覚に陥ることがあるんですよ。その感覚を知ってもらいたいなと思ったんです。だから、子どもたちや年配の方が毎日でも通える場所にしたくて、浜松駅から車で20分のところで浜松ホースランドを始めました」