ここからが大変だった。馬を輸入するには厳しい検疫を受けなくてはいけない。その段階で引っかかり、シュメールは日本に渡って来れなくなった。そこでやむなく別の馬を選ぶことになるのだが、その過程で「衛生管理が行き届いた日本でアハルテケを繁殖したらどうか?」という話が持ち上がった。
先述したように、アハルテケは世界に約3000頭しかいない希少種で、アハルテケの血統を管理する団体を中心に、ほかの品種との交配を避けながら純血種を増やす取り組みが行われている。アハルテケに惚れ込んだ長谷川さんは快諾し、日本での繁殖に挑むことを決めた。
アハルテケはサラブレッドと同じく血統で評価が決まり、高い馬は1億円に達することもある。それほどの価格ではなくても、繁殖して信頼できるところに売るという循環を確立できれば、牧場として持続可能だと考えた。
繁殖するとなると、少なくとも5頭は必要になる。長谷川さんはロシアやヨーロッパで購入可能な純血種を探し回ったが、そもそも3000頭しかいないアハルテケを売ってくれる牧場がなかなかない。ようやく見つかっても、血縁が近い馬は避けなければいけない。数々のハードルを乗り越えて日本に輸入する5頭を決めるまでに、1年以上かかったという。