アップルパイは、宮本さんの手作り。味が落ちるため、必要な分だけのリンゴをコンポートにして、なるべく作り置きしないようにしている。その特徴について、奥さんが解説してくれた。
「リンゴのおいしさを味わってもらいたいので、砂糖は控えめです。ふじは甘みが強いので、レモン果汁で酸味を足しました。バター100%のパイ生地は、サクサクした食感ですね。シナモンは好き嫌いがあるので、お客さんの希望を聞いてからかけます。余計なものは加えず、リンゴとパイ生地のシンプルな風味を楽しんで欲しいですね」
葡瑠満にはひっきりなしにアップルパイを求めるお客さんが訪ねてくる。でもタイミング悪くその日の分が売り切れていると、店を出ていく人も少なくないという。
僕は言いたい。ちょっと待った! 実は、開店当初から宮本さんが自信をもって出してきたのは自家製チーズケーキ。働いていた銀座の葡瑠満でオーナーの妻からレシピを教わり、それをベースに何種類ものチーズケーキを作るようになった。弘前でアップルパイが有名になる前、葡瑠満は一杯一杯ドリップするこだわりのコーヒーとチーズケーキの店として知られていたのだ。
宮本さんが、「よかったら」と出してくれたのは、ミディアムチーズケーキ。スプーンを入れるとプルンッとした感触。口に含むと、クリームチーズの甘みと酸味がフワッと弾けて、優しく消えていった。こ、こ、これは絶品!
ほかにも、アメリカ原産で、明治時代の初めに日本に入ってきた歴史を持つ品種「紅玉」を6個も使って焼くリンゴのタルトなどなど、葡瑠満には宮本さんお手製のケーキが充実している。アップルパイ目当てのお客さんも、売り切れてたらほかのケーキを試してほしい!