未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
206

震えて驚き発見する氷の世界へ マイナス41度の風に吹かれて

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.206 |25 March 2022
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#6「本気」のそりコース

ちなみに、アイスパビリオンは1年中オープンしている。夏の暑い日に涼みにくるのも楽しいだろう。しかし! 僕は断言する。アイスパビリオンは、冬がお勧めだ。

見た目のほっこり感からは想像もできないスピードが出る練習コース。

さすがに、冬は夏よりもお客さんが減る。そこでアイデアマンの帆苅さんが、「そり遊びをしてもらおう」と閃き、雪が積もった日に職員総出で、外にそりのコースを作った。これが年々進化しており、現在はキッズコース、ドームスライダーコース、45度傾斜のコースが用意されている。ソリは、わざわざ海外から輸入しているスライダーを使用。前後に連結できるのが特徴で、グループで一緒に滑ることができる。

写真からは伝わらないけど、スリル満点。

そりと聞くと、子どもの遊びのように感じるかもしれない。僕も最初はそう思っていたんだけど、館長と今野さんから「ぜひそりを体験してほしい。そりが好きで何度も来る家族もいるんです」と言われて、まずは初心者用のキッズコースで乗ってみたら……。

想像をはるかに超えるスピード感があって、カラダが固定されていない分、並みのジェットコースターよりスリルがある! さすが、室内に1000トンの氷を蓄える男、そりのコースも子どもだましではなく、「本気」を感じる作りなのだ。キッズコースで「おわーっ!」と叫びながら滑り切った時には、このスライダーが大好きになっていた。

次に向かったのは、ドームスライダー。今野さんとスライダーを連結してランデブー! こちらはキッズコースよりもコースが長く、傾斜もあり、もっとジェットコースター感がある。連結しているからこその一体感もあり、正直に言ってめちゃくちゃ楽しい。まさか、42歳の男がそりでこんなにテンションが上がるなんて!

パッと見ただけで「ずいぶん急ですね……」と怖気づく45度傾斜。

締めくくりは、45度傾斜コース。よくこんなコースを作ったなと感心する。はたから見ても相当な急傾斜なんだけど、スタートラインから見る景色は滑るのではなく、「落ちる」感覚だ。今野さんによると、スタートラインで怖気づいて、やっぱりやめるという人が大半だという。

しかし! 僕は遊びに来たのではない。取材に来たのだ。「僕は行きます!」と威勢よくスタートラインにつき、スタッフさんに押してもらって一気に滑り降りた。恐らく、その瞬間の顔は恐怖でひきつっていただろう。マジで怖い。でも、達成感もハンパない。今野さんに撮ってもらった写真は、恐怖感を微妙に残したドヤ顔だった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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