それにしても、こんなに遠くまでお客さんはくるものだろうか?
「そうですね、さきほどの『高塩菓子店』で紹介されて来る方もいますし、インスタグラムを見て『帰省のついでに来ました』という地元出身の若い人とか。最近、嬉しかったのは高校生の女の子が来てくれたことです。わざわざお祖父さんの車に乗ってきてくれたんです。目をキラキラさせて長い時間をかけて本を選んで、ロシア文学にはまってるんだって、ロシア文学案内を買っていきました。次の週も来てくれて。『今度は自転車で来る』と言うので、うちの周辺は熊や鹿もでるんで、車で来た方がいいよって言ったんですけど」
それでも、まだお客さんは決して多いとはいえず、試行錯誤の真っ只中にあるという。そんな時に内田さんを勇気づけてくれるのは、同じように「好き」だけを羅針盤に、コツコツお店を続けている地域の先輩や仲間だ。特に内田さんが働いていた黒磯エリアには、ユニークで元気な個人店が集積している。
だからこそ、本屋さんを始めた当初、内田さんは少し心配だった。
「始めたばかりの頃は、どこか得体の知れないお店だから、怖がられて誰も来なかったらどうしよう、と心配していたのですが、実際には、来てくれる人もいて、地域のお店の方々からも、イベント出店、マルシェなどに声をかけてもらったりと、よくしてもらっています。自分のお店を始めてみると、(バイトをしている時などと比べて)新たに出会う人の数も増え、また、その関わり方も以前とは違ってきた感覚があります。考えてみると、最初からひとりで独立していた人なんていなくって、誰もがひとりでやろうと決断をした同士なんですよね。だから、そういう人たちと一緒に頑張っていけるようになったのが嬉しいです」
地域で商いを行う先輩や仲間たちと支え合うことで、生まれたばかりのBullock Booksは今日も少しずつ前に進んでいるのだ。