それにしても、黒磯はやっぱり不思議な街である。狭い通りの一角に、カフェ、レストラン、雑貨屋、洋服屋、仕立屋さん、家具屋などがひしめいている。さきほど聞いた通り、個人がやっているユニークな店ばかりだ。
せっかくなので、今回はそんなお店の中から、内田さんのオススメの場所をふたつほど巡ることにした。
ひとつめは、「ROOMS」。
「とても素敵なお店で、何も買う予定のない日でも立ち寄ってしまいます」(内田さん)
そこは、アンティークの家具やヨーロッパの雑貨を中心とした美しいお店だ。店主の川瀬真吾さんが西ヨーロッパなどから買い付けた品々のほか、オリジナルの家具も販売する。
「こだわりは、長く使い続けられるものを提案することです。本物の素材で、一生使い使い続けられるもの」
そう語る店主の川瀬さんは、もともと家具の製作所で働く職人だった。
「家具職人として働いていたころ、百貨店の店舗の什器製作なども手がけていましたが、コストも限られているので、素材もチープな上に、その店舗が撤退すると全てゴミになってしまう。こういう仕事を続けていてもしょうがないなあ、と感じました」
その後、縁あって今のお店を始めることになった。
ヨーロッパから来たセンスの良い食器や家具のほか、何に使うのか全くわからない不思議な品々も。店内のあちこちにクマの置物やグッズが置かれているのは、きっと店主の好みなのだろう。ここも良い意味で趣味が偏ったお店なのだ。