未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
145

「私たちには物語が必要だ!」 森の中の不思議な本屋さん「Bullock Books」

文= 川内 有緒
写真= 川内 有緒
未知の細道 No.145 |10 September 2019
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#9ロンドンの仕立て屋さんに紛れ込んだ!?

もうひとつは、女性ひとりで運営する小さな洋品店「and & BOY」。やや奥まった場所にあるのだけれど、ここは必見である。
扉を開けると、髪を金髪に染めたほっそりとした女性が、とても熱心に本を読んでいる。手にしている本は、「トーマス・マン全集」。

「and & BOY」店主の小山裕子さん。写真手前に並ぶ白い箱はトーマス・マンの全集。

トーマス・マンといえば『魔の山』くらいしか知らない私は、その真剣な読書姿を見ただけで感動ものだった。さらに感動的なのは、その空間である。隅々まで店主の美意識が行きわたり、まるでイギリスあたりのヒップな仕立て屋さんに紛れ込んだような錯覚を覚える。
「ロンドンかどこかにいらしたのですか!」と興奮しながら聞くと、「いえいえ、私は函館で生まれて、ここに引っ越して来るまでは、ほとんど北海道を出たことがなかったんですよ!」と楽しそうに答えた。

小山さんは、2015年に黒磯のギャラリーで展示会を開いたことをきっかけに、 翌年には電撃的に移住。それ以来「一度も北海道に帰りたいと思うことはない」と言い切るほど、ここでの暮らしが気に入っている。
自らデザインし、縫製された1点ものの洋服は「本当にかっこいいんですよ、着てみてください!」とBullock Booksの内田さんも熱心に勧める。
鏡に向かってロングジャケットを着てみると、自分も不思議な舞台の主人公になった気分になった。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

小さなお店とアートを巡る旅 一泊二日

予算の目安2万円

最寄りのICから【E6】常磐自動車道「桜土浦IC」を下車
1日目
矢板や黒磯のユニークなお店を巡ってみよう。今回記事で紹介したお店はこちらです。

高塩菓子店
Bullock Books栃木県矢板市長井1840
Rooms
and & BOY (栃木市那須塩原市高砂町 6-5 202)
MEOW COFFEEが購入できるのは「道の駅 明治の森・黒磯

1988 CAFE SHOZO に寄ってコーヒータイムもおすすめです。
2日目
那須や黒磯には、たくさんの個性的なアートスポットや美術館が。思いのままに巡ってみよう。

現代美術作家の奈良美智さんの美術館「N's YARD
「水庭」が話題を集める「アートビオトープ那須
ノスタルジックな気分になれる「藤城清治美術館

または、栃木市の「蔵の街」に移動し、歴史を感じながらの散策もおすすめ。
遊覧船の船頭唄を聴きながら 巴波川沿いに歩く栃木の蔵の街 | 未知の細道 ※ 栃木市には今回の記事中に登場した増山やよいさんの「湊町エピスリー」も。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。