未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「私たちには物語が必要だ!」 森の中の不思議な本屋さん「Bullock Books」

文= 川内 有緒
写真= 川内 有緒
未知の細道 No.145 |10 September 2019
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#10私たちには物語が必要だ!

再び山道をドライブし、Bullock Booksに戻ると、すっかり日はくれていた。
昼間の暑さがひいて、ひんやりとした夜風が吹いている。

ああ、次に来た時には、ここで静かに本を読むのもいいなあ!
木陰にピクニックシートを引いて、春には桜を眺めて、秋には紅葉を眺めて。なんて贅沢な時間なんだろう!
……と勝手に妄想していると、「これから、ウェルカムドリンクとしてアイスコーヒーを出そうかと考えています」と内田さんは言う。
おお、それは嬉しい!
そこで出されるのは、地元の女性によって丁寧に焙煎されたコーヒー、MEOW COFFEE。日本やアメリカ西海岸で長年コーヒーに関わってきた高根沢尚子さんが、小川のほとりの小屋で焙煎した浅煎りのコーヒーである。

  • 内田さんと話すMEOW COFFEEの高根沢尚子さん。
    小川のほとりにある焙煎小屋の前にて。

お菓子に、家具、洋服、そしてコーヒー。
こんな風に、こだわりぬいて生み出された品々は、どこか「本」という存在にも似ているように思う。
そこには物語があり、人生がある。
「いま世の中では、スピードとか結果ばかりが求められているような気がします。早いサービスとか、安い品物とか。しかし、物語を読むという行為はその反対にあって、とても時間がかかるものです。最後のページにいきつくまで時間をかけて物語を読むことで、ひとつの品物の裏側にいる人たちへの想像力が膨らむのではないでしょうか。だから、現代を生きる私たちには、もっと物語が必要だと思うんです!」
そう内田さんが語る通り、この街には、自分の好きなものと生きようと決意した人たちの物語が溢れていた。
そして、Bullock Booksもそんな街の物語のひとつとして、今日もひっそりと開店している。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

小さなお店とアートを巡る旅 一泊二日

予算の目安2万円

最寄りのICから【E6】常磐自動車道「桜土浦IC」を下車
1日目
矢板や黒磯のユニークなお店を巡ってみよう。今回記事で紹介したお店はこちらです。

高塩菓子店
Bullock Books栃木県矢板市長井1840
Rooms
and & BOY (栃木市那須塩原市高砂町 6-5 202)
MEOW COFFEEが購入できるのは「道の駅 明治の森・黒磯

1988 CAFE SHOZO に寄ってコーヒータイムもおすすめです。
2日目
那須や黒磯には、たくさんの個性的なアートスポットや美術館が。思いのままに巡ってみよう。

現代美術作家の奈良美智さんの美術館「N's YARD
「水庭」が話題を集める「アートビオトープ那須
ノスタルジックな気分になれる「藤城清治美術館

または、栃木市の「蔵の街」に移動し、歴史を感じながらの散策もおすすめ。
遊覧船の船頭唄を聴きながら 巴波川沿いに歩く栃木の蔵の街 | 未知の細道 ※ 栃木市には今回の記事中に登場した増山やよいさんの「湊町エピスリー」も。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。