再び山道をドライブし、Bullock Booksに戻ると、すっかり日はくれていた。
昼間の暑さがひいて、ひんやりとした夜風が吹いている。
ああ、次に来た時には、ここで静かに本を読むのもいいなあ!
木陰にピクニックシートを引いて、春には桜を眺めて、秋には紅葉を眺めて。なんて贅沢な時間なんだろう!
……と勝手に妄想していると、「これから、ウェルカムドリンクとしてアイスコーヒーを出そうかと考えています」と内田さんは言う。
おお、それは嬉しい!
そこで出されるのは、地元の女性によって丁寧に焙煎されたコーヒー、MEOW COFFEE。日本やアメリカ西海岸で長年コーヒーに関わってきた高根沢尚子さんが、小川のほとりの小屋で焙煎した浅煎りのコーヒーである。
お菓子に、家具、洋服、そしてコーヒー。
こんな風に、こだわりぬいて生み出された品々は、どこか「本」という存在にも似ているように思う。
そこには物語があり、人生がある。
「いま世の中では、スピードとか結果ばかりが求められているような気がします。早いサービスとか、安い品物とか。しかし、物語を読むという行為はその反対にあって、とても時間がかかるものです。最後のページにいきつくまで時間をかけて物語を読むことで、ひとつの品物の裏側にいる人たちへの想像力が膨らむのではないでしょうか。だから、現代を生きる私たちには、もっと物語が必要だと思うんです!」
そう内田さんが語る通り、この街には、自分の好きなものと生きようと決意した人たちの物語が溢れていた。
そして、Bullock Booksもそんな街の物語のひとつとして、今日もひっそりと開店している。