「いまのところ古書が8割で、新刊2割です。東京で買い付けてきたり、知人から買い取ったりして揃えました。ゆくゆくはもっと新刊を増やしたいと思っているところです」
私もマッシーも、夢中になって棚を眺めた。
小さな本屋さんというのは、とても興味深いものだ。棚やスペースが限られている分、商品のセレクションには店主の好みが色濃く反映され、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」という方角に向かっていく。だから、趣味が合う人は合うし、合わない人は銀河系の反対側くらいに合わない。
さすがSF好きだけあって、SFコーナーも充実している。その他、ユニークな写真集、絵本、詩集やアートブック、エッセイも。
「本というのは、簡単にかいつまんで読むことはできないものですよね。時間をかけてひとりで付き合っていくから、すごく孤独だし、なかなか共有しづらい部分もあります。でも、だからこそ面白いと思うんですよ。時々インスタグラムにオススメの本をアップしているのですが、(いい意味で)偏ってるねー! と言わることもあります。」(内田さん)
マッシーは目ざとく『ろばのいる村』というめちゃくちゃマニアックな本を選びだし、満足そうにレジに向かった。(レジは軒先のテラス!)
ああ、どうしよう、私はなにを買おうかしら?
迷いに迷っている私を、内田さんは微笑ましい目で見守り、ときおり本について優しく語り始める。その独特の距離感が心地いい。こうして、書店の人と気軽に話すこと自体がいまやとても貴重な体験だ。
懐かしい本もいくつかあり、ノスタルジックな気分になってくる。ああ、なんかすっかり忘れていたけれど、10代のあの頃、私は新井素子さんと吉本ばななさんの本を愛していた……!
さんざん悩んだあげく、私は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』ほか、計3冊を選んだ。ずいぶん久しぶりに読むSF小説。大きな新刊書店では、まず選ばない本である。