未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
145

「私たちには物語が必要だ!」 森の中の不思議な本屋さん「Bullock Books」

文= 川内 有緒
写真= 川内 有緒
未知の細道 No.145 |10 September 2019
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#6アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

木がふんだんに使われた内装が個性的だ。

「いまのところ古書が8割で、新刊2割です。東京で買い付けてきたり、知人から買い取ったりして揃えました。ゆくゆくはもっと新刊を増やしたいと思っているところです」
私もマッシーも、夢中になって棚を眺めた。

小さな本屋さんというのは、とても興味深いものだ。棚やスペースが限られている分、商品のセレクションには店主の好みが色濃く反映され、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」という方角に向かっていく。だから、趣味が合う人は合うし、合わない人は銀河系の反対側くらいに合わない。

  • 中央の平台には写真集やアートブックが並ぶ。
  • お気に入りの本を見つけて喜ぶマッシー。

さすがSF好きだけあって、SFコーナーも充実している。その他、ユニークな写真集、絵本、詩集やアートブック、エッセイも。
「本というのは、簡単にかいつまんで読むことはできないものですよね。時間をかけてひとりで付き合っていくから、すごく孤独だし、なかなか共有しづらい部分もあります。でも、だからこそ面白いと思うんですよ。時々インスタグラムにオススメの本をアップしているのですが、(いい意味で)偏ってるねー! と言わることもあります。」(内田さん)
マッシーは目ざとく『ろばのいる村』というめちゃくちゃマニアックな本を選びだし、満足そうにレジに向かった。(レジは軒先のテラス!)
ああ、どうしよう、私はなにを買おうかしら?
迷いに迷っている私を、内田さんは微笑ましい目で見守り、ときおり本について優しく語り始める。その独特の距離感が心地いい。こうして、書店の人と気軽に話すこと自体がいまやとても貴重な体験だ。
懐かしい本もいくつかあり、ノスタルジックな気分になってくる。ああ、なんかすっかり忘れていたけれど、10代のあの頃、私は新井素子さんと吉本ばななさんの本を愛していた……! 

さんざん悩んだあげく、私は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』ほか、計3冊を選んだ。ずいぶん久しぶりに読むSF小説。大きな新刊書店では、まず選ばない本である。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。