未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
107

埼玉県秩父郡

2016年4月、秩父市に日本初のシュガーハウス「メープルベース」がオープンした。シュガーハウスとは、カエデの樹液を煮詰めてメープルシロップを作る小屋のこと。メープルベースでは、秩父の山に自生するカエデの樹液でメープルシロップを作っている。この活動、実は秩父の森を守り、育てるために大きな役割を担っているのだ。これは、秩父のカエデに懸けたひとりの女性とその仲間たちのストーリー。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.107 |10 February 2018
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埼玉県秩父市

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#1冬のカナダ?

取材当日の秩父ミューズパーク内の様子。

 2月某日、東京でちらちらと雪が降った日、埼玉県秩父市の山麓は一面の銀世界だった。西武秩父駅から車でおよそ15分。秩父ミューズパーク内に駐車し、ひとけのない銀杏の並木道を少し歩くと、大きなログハウスが見えてくる。雪をかぶって白い屋根のログハウスを見て、僕は思わず声を上げた。

「なんか、冬のカナダっぽいですね!」

 カナダには、冬どころか一度も行ったことがない。ただ、それまでカナダの話を聞いていたので、こういう景色なのかなと思ったのだ。僕の言葉に苦笑しながら「そうかもしれませんね」と答えてくれたのが井原愛子さん。秩父市からこのログハウスを借り受け、日本初のシュガーハウス「MAPLE BASE(メープルベース)」を運営する女性起業家。

すっかり雪化粧したメープルベース。

シュガーハウスとは、メープルシロップの本場であるカナダの言葉で、メープルシロップを作る小屋を指す。なかにはカフェやショップを併設している施設もあり、メープルシロップを求める町の人や観光客が集う。

 2014年4月、カナダでその存在を知った井原さんは、「秩父にも作りたい!」と東奔西走。賛同する仲間たちとともに手を尽くし、2016年4月、メープルベースをオープンした。そう聞くと、よっぽどのメープルシロップ好きなのかと思ってしまうけど、井原さんの答えは「そうでもありません(笑)。パンケーキを食べる時とかに使う程度ですね」。

 メープルマニアじゃない人が、なぜ日本初のシュガーハウスを作ったのか。これは、秩父のカエデとサステイナブルな森づくりに懸ける井原さんとその仲間たちの物語だ。

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未知の細道 No.107

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。