未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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荒川とガンジス川は繋がっている!

インドの人々と巡る、東京インド旅。

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.97 |25 August 2017
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#8カレーを食べよう!

荒川と東京湾の境目と、のんびりと夕日を眺める人々。

 一家に別れを告げて、もう少し葛西臨海公園を歩き回ってみる。会場外からライブを聴いている人々をかき分けていくと、目の前に東京湾が広がっていた。荒川につながる地点の向こう側には、うっすらと夕日が見える。

 そこでふと思い出した。そういえばカレーらしいカレーを食べていないじゃないか。リトルインドまで来て、カレーを食べないで帰るわけにはいかない。そうだ、チャンドラニさんの店「カルカッタ」には南口店があったんだ。北口本店では北インドカレーが、南口店では南インドカレーが食べられる。

「スパイスマジック カルカッタ」南口店。大きな看板が目印。

 西葛西まで舞い戻り、「スパイスマジック カルカッタ南口店」へ。まだ時間が早いからか誰もいなかった。ヴァダとイドゥリーというあまり聞き慣れないものが入ったセットを注文する。

南インドの基本セット。普段あまり食べたことのない味だ。

 運んできてくれたのはシヴ・クマルさん。日本に来て9年だそう。かわいらしい笑顔でセットの説明をしてくれる。

 まずはヴァダから。シヴさんは豆と言っていたが、なんだかふわふわのドーナツみたいだ。スパイスが効いていておいしい。そしてイドゥリー。こちらはお米の蒸しパンのような感じ。どちらも、南インド特有のサラサラとしたカレーをよく吸ってくれる。カレーはあまり見慣れない透明で、野菜スープのようだ。しかしそんな優しい味ではなく、パンチの効いたスパイスが喉に入り込んでむせた。サイドについているトマトとココナッツのチャツネがアクセントだ。

「南インドのカレーは初めて食べます。なんでこんなにサラサラしてるの? 何が入ってるの?」

 興味本位でシヴさんに質問すると、キッチンにいる2人とヒンディー語で何やらずっと話をしている。全員が真顔で、私をチラチラ見ながら、なんだかヒンディー語が荒々しい気がする。

 しまった、余計なことを聞いて怒らせちゃったかな……と思ったら「こっちにおいで」と厨房から手招きされた。

 厨房にいたのは日本に10年住んでいるというウメシュ・ヤダヴさんとラクシュマン・マハトさん。

カルカッタのスタッフたち。言葉は通じなくても、みんな優しい。

「これ、ゲフン カ アタ。ナンとかチャパティ(小麦粉を練って薄く延ばして焼いたもの)に使う。日本語でなんて言う?」

 小麦粉の袋を指差して、メニューを指差して、お互いああだこうだと会話をする。入り乱れる日本語とヒンディー語と英語。通じているのかいないのか、正直わからない。そして結局、なぜ南北でカレーがこんなに違うのかはわからなかったけど、こんなやり取りもまたインドを思い出させる。


未知の細道 No.97

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

東京のインドを巡る旅プラン 1泊2日

予算の目安1万5千円〜

最寄りのICから【C2】首都高速中央環状線「清新町」を下車
1日目
ランチは「印ストリート」で、インドのファーストフードを食べてみよう。軽くおなかを満たしたら、買い物へ。駅前は長い商店街になっているので、散策しながらインド食材店「スワガット インディアン バザール」に向かおう。インドの雰囲気を感じながら買い物ができる。店主のアロックさんにオススメの商品を聞いてみると、掘り出し物に出会えるかも!
2日目
朝から、お菓子やお弁当を持って葛西臨海公園へ。水族館や観覧車を楽しむもよし、波の音を聞きながら芝生で寝転ぶもよし。夜ご飯は、「スパイスマジック カルカッタ」にて。本場のインド人スタッフに言えば、辛さを調節してくれる。マンゴーラッシーはカレーとの相性抜群!

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。