一家に別れを告げて、もう少し葛西臨海公園を歩き回ってみる。会場外からライブを聴いている人々をかき分けていくと、目の前に東京湾が広がっていた。荒川につながる地点の向こう側には、うっすらと夕日が見える。
そこでふと思い出した。そういえばカレーらしいカレーを食べていないじゃないか。リトルインドまで来て、カレーを食べないで帰るわけにはいかない。そうだ、チャンドラニさんの店「カルカッタ」には南口店があったんだ。北口本店では北インドカレーが、南口店では南インドカレーが食べられる。
西葛西まで舞い戻り、「スパイスマジック カルカッタ南口店」へ。まだ時間が早いからか誰もいなかった。ヴァダとイドゥリーというあまり聞き慣れないものが入ったセットを注文する。
運んできてくれたのはシヴ・クマルさん。日本に来て9年だそう。かわいらしい笑顔でセットの説明をしてくれる。
まずはヴァダから。シヴさんは豆と言っていたが、なんだかふわふわのドーナツみたいだ。スパイスが効いていておいしい。そしてイドゥリー。こちらはお米の蒸しパンのような感じ。どちらも、南インド特有のサラサラとしたカレーをよく吸ってくれる。カレーはあまり見慣れない透明で、野菜スープのようだ。しかしそんな優しい味ではなく、パンチの効いたスパイスが喉に入り込んでむせた。サイドについているトマトとココナッツのチャツネがアクセントだ。
「南インドのカレーは初めて食べます。なんでこんなにサラサラしてるの? 何が入ってるの?」
興味本位でシヴさんに質問すると、キッチンにいる2人とヒンディー語で何やらずっと話をしている。全員が真顔で、私をチラチラ見ながら、なんだかヒンディー語が荒々しい気がする。
しまった、余計なことを聞いて怒らせちゃったかな……と思ったら「こっちにおいで」と厨房から手招きされた。
厨房にいたのは日本に10年住んでいるというウメシュ・ヤダヴさんとラクシュマン・マハトさん。
「これ、ゲフン カ アタ。ナンとかチャパティ(小麦粉を練って薄く延ばして焼いたもの)に使う。日本語でなんて言う?」
小麦粉の袋を指差して、メニューを指差して、お互いああだこうだと会話をする。入り乱れる日本語とヒンディー語と英語。通じているのかいないのか、正直わからない。そして結局、なぜ南北でカレーがこんなに違うのかはわからなかったけど、こんなやり取りもまたインドを思い出させる。
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ウィルソン麻菜