そういえば、西葛西の駅前で話しかけたプラヴィーンさんが教えてくれたインド食材の店に行ってみたい。そう言うと、チャンドラニさんが連れて行ってくれるという。
「西葛西は電線がないんですよ。地下に埋まってるから、空が広くていいでしょう」
街を歩きながら、西葛西のことをいろいろと教えてくれる。すれ違う人は、日本人もインド人も、チャンドラニさんを見て挨拶していく。まさに西葛西リトルインドの父。
駅を越えて東方面に出て歩くと、インドの国旗が見えてきた。「スワガット インディアン バザール」は、インド食材を取り扱う小さなお店。ドアを開けると、暑く湿った東京の匂いが、途端にインドのスパイスの香りに変わる。色とりどりのパッケージ、や固形のスパイスたち。ここは、インド? と錯覚するほどにインドが詰まっている。
店主はインドのガヤーから来ているアロック・クマルさん。26歳とまだ若い彼は、おじいさんが経営するこの店を手伝うために日本に来た。お店のお客さんは、ほとんどがインド人だという店内には、インドのお米やお菓子などに混じって、時々日本のものも売っていたりする。
ちょうどその日買い物に来ていたのは、日本にいるインド人の娘さんと、彼女を訪ねてきたご両親。日本にいながらにして、お母さんの手料理が食べられるのは、このお店があるおかげだ。
チャンドラニさんおすすめのバナナチップスとチャイを購入して、店を出る。本場のチャイは数年ぶりだ。インドで買ってきたチャイが、自宅でうまく煮出すことができなかったのを思い出す。今回買ったのはお湯に溶かすタイプだから大丈夫だろう。
駅まで送ってくれたチャンドラニさんにお礼を言うと、優しい顔で「いつでも戻ってきていいからね」と笑いかけてくれた。インドから見知らぬ国に来た人々が、ここに集う気持ちがわかったような気がした。
日本の駅前の風景の中に、白髪のインド人が紛れていく。それは西葛西にとって当たり前の光景だ。
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※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。
ウィルソン麻菜