「インドには東西南北、本当にいろんな種類のスパイスとカレーがあるんだ」
そう言うと、ちょっと待っててよとばかりに鍋を出してくるウメシュさん。すぐに、よく見慣れたチキンカレーと、野菜のスープが出てきた。
3人とも、私が食べるのを笑顔で待っている。ご厚意に甘えていただくことにした。チキンカレーは北インドのカレー。クリーミーで甘いこの味は、一体何種類のスパイスで表現できるのだろう。スープは南インドのもので、カレー同様サラサラで野菜がたくさん。辛い和風スープのような味だ。そこまで辛いものが得意ではない私は、むせながら「ひゃーおいしい! ひゃー辛い! でもおいしい!」と繰り返し、飲み干した。
むせる私にシヴさんがマンゴーラッシーを差し出してくれた。インドでも初めて飲んだのはこのラッシーだったっけ。少し目が潤んできたのは、辛さのせいだけではなかった。
「『ありがとう』は、ヒンディー語で『ダンニャバードゥ』」
3人が教えてくれたこの言葉を、何度も繰り返す。よく冷えたマンゴーラッシーが、ヒリヒリとした辛さを連れて喉の奥へと流れていった。
「また絶対来るからね! 本当にごちそうさま! ダンニャバードゥ!」
シェフ直々に説明してもらいながら、南北のカレーを食べ比べるとは贅沢な経験だった。はちきれそうなお腹を抱えて帰路につく。
思えば西葛西は、サリーを来た女性たちがたくさん歩いていたり、インドの国旗や雑貨がそこら中に並んでるという、思い描いていたようなインド街ではなかった。そこは静かに、そして穏やかにインドの人々が暮らす街だった。
それでも、目がさめるようなスパイスの香りとヒリヒリのカレー、そして家族思いの優しい人たち。またここに戻ってきてみんなに会いたいなぁ、と思うのは、遠い国インドを訪れたときと同じだった。
来たときとは反対向きに、横目で荒川を通り過ぎる。この荒川も、はるか遠くのガンジス川とつながっているんだよな、なんて今まで考えたこともない景色が浮かんだ。
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ウィルソン麻菜