未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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荒川とガンジス川は繋がっている!

インドの人々と巡る、東京インド旅。

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.97 |25 August 2017
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#9「ありがとう」は「ダンニャバードゥ」!

南インドの辛いスープと、甘くて濃厚なチキンカレー。

「インドには東西南北、本当にいろんな種類のスパイスとカレーがあるんだ」

 そう言うと、ちょっと待っててよとばかりに鍋を出してくるウメシュさん。すぐに、よく見慣れたチキンカレーと、野菜のスープが出てきた。

 3人とも、私が食べるのを笑顔で待っている。ご厚意に甘えていただくことにした。チキンカレーは北インドのカレー。クリーミーで甘いこの味は、一体何種類のスパイスで表現できるのだろう。スープは南インドのもので、カレー同様サラサラで野菜がたくさん。辛い和風スープのような味だ。そこまで辛いものが得意ではない私は、むせながら「ひゃーおいしい! ひゃー辛い! でもおいしい!」と繰り返し、飲み干した。

 むせる私にシヴさんがマンゴーラッシーを差し出してくれた。インドでも初めて飲んだのはこのラッシーだったっけ。少し目が潤んできたのは、辛さのせいだけではなかった。

冷たいマンゴーラッシーが、辛さを緩和してくれる。

「『ありがとう』は、ヒンディー語で『ダンニャバードゥ』」

 3人が教えてくれたこの言葉を、何度も繰り返す。よく冷えたマンゴーラッシーが、ヒリヒリとした辛さを連れて喉の奥へと流れていった。

「また絶対来るからね! 本当にごちそうさま! ダンニャバードゥ!」

 シェフ直々に説明してもらいながら、南北のカレーを食べ比べるとは贅沢な経験だった。はちきれそうなお腹を抱えて帰路につく。

 思えば西葛西は、サリーを来た女性たちがたくさん歩いていたり、インドの国旗や雑貨がそこら中に並んでるという、思い描いていたようなインド街ではなかった。そこは静かに、そして穏やかにインドの人々が暮らす街だった。

 それでも、目がさめるようなスパイスの香りとヒリヒリのカレー、そして家族思いの優しい人たち。またここに戻ってきてみんなに会いたいなぁ、と思うのは、遠い国インドを訪れたときと同じだった。

 来たときとは反対向きに、横目で荒川を通り過ぎる。この荒川も、はるか遠くのガンジス川とつながっているんだよな、なんて今まで考えたこともない景色が浮かんだ。


未知の細道 No.97

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

東京のインドを巡る旅プラン 1泊2日

予算の目安1万5千円〜

最寄りのICから【C2】首都高速中央環状線「清新町」を下車
1日目
ランチは「印ストリート」で、インドのファーストフードを食べてみよう。軽くおなかを満たしたら、買い物へ。駅前は長い商店街になっているので、散策しながらインド食材店「スワガット インディアン バザール」に向かおう。インドの雰囲気を感じながら買い物ができる。店主のアロックさんにオススメの商品を聞いてみると、掘り出し物に出会えるかも!
2日目
朝から、お菓子やお弁当を持って葛西臨海公園へ。水族館や観覧車を楽しむもよし、波の音を聞きながら芝生で寝転ぶもよし。夜ご飯は、「スパイスマジック カルカッタ」にて。本場のインド人スタッフに言えば、辛さを調節してくれる。マンゴーラッシーはカレーとの相性抜群!

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

ウィルソン麻菜

1990年東京都生まれ。学生時代に国際協力を専攻し、児童労働撤廃を掲げるNPO法人での啓発担当インターンとしてワークショップなどを担当。アメリカ留学、インド一人旅などを経験したのち就職。製造業の会社で、日本のものづくりにこだわりを持つ職人の姿勢に感動する。「買う人が、もっと作る人に思いを寄せる世の中にしたい」と考え、現在は野菜販売の仕事をしながら作り手にインタビューをして発信している。刺繍と着物、野菜、そしてインドが好き。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。