未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
270

過疎の町に集うレコードファン! 古民家レコード屋がつくる新たなつながり

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.270 |10 Dec 2024
この記事をはじめから読む

#4古民家レコード、話題になる

しかしである。5000枚のレコードの置き場に困っていた岡崎さんは、実家の母が年とったこともあって大子に戻り、まだ営業している実家の床屋にレコード店を併設することを急遽決めたのだった。売上が立つネット通販を主体にし、「店はおまけみたいなつもり」だっという。

帰郷してからわずか3カ月後の2022年12日、古民家レコード『MELLOW』をオープン。母には「うまくいくわけがない」と反対されたが、弟が応援してくれた。「弟の協力がなければ店を開くことはできなかったです」と岡崎さん。店の内装や什器などのしつらえは、DIYが得意な弟がすべてやってくれた。そして母の床屋と息子の中古レコード屋が共存してオープンするという、おそらく日本では唯一無二の経営スタイルが始まったのだった。

「ゆるい感じで始めたんですけどね」

しかし予想外の展開が続いた。おまけのつもりで開いた店だが、開けてみると反響が大きかったのである。「本当にこんなところにレコード屋があるのか?」と噂を聞きつけた近隣のレコード好きたちが、あっという間に『MELLOW』へと集まってきたのであった。

店を始める前は「人口が減り続けているこの町に、レコード好きな人なんているのかなあ……4、5人くらいかな」などとのんびり思っていた岡崎さんだが、「とんでもなかったです!」と笑う。世の中は「レコードブーム」が再燃しており、それは、ここ大子町も例外ではなかったのだ。

お客さんの世代も実にさまざまだ。上はレコード世代の60代、70代から、岡崎さんと同世代の50代や40代の働き盛りの人たち。さらにレコードに興味がある20、30代の若者たち。そして一番下は近所の中学生、つまり10代まで実に幅広い客層なのだという。「レコードに興味がある若者と、レコード世代のおじいさんとか、初めて出会った人たちが、店の中でフラットに話せる」と岡崎さんは言う。居合わせた人たちがレコードを通して繋がっていく瞬間だ。

結局、通販ではなく、実店舗をメインでやっていくことになった岡崎さん。直ぐにさまざまな取材が入り、最初は反対だった母も喜んでくれるようになった。すでに癌だった母は2023年に他界したが、亡くなる3ヶ月前に寝たきりになるまで、10カ月ほどは一緒にお店をやっていたことも、岡崎さんにとっては良い思い出だ。

毎週のようにやってくる近隣のお客さんに加えて、週末ともなれば栃木、千葉、東京など関東一円はもちろんのこと、隣りの福島、遠くは宮城、新潟、静岡からもお客さんがやってくるという。口コミで人気ミュージシャンや、時には外国人のバイヤーなども、わざわざここまで買いにくるというから驚きだ。

「数十年ペーパードライバーだったけど、どうしても『MELLOW』に行ってみたくて、レンタカーを借りて千葉からやってきました、なんていうお客さんもいて、あれは嬉しかったなあ」と岡崎さんは笑って教えてくれた。

レコードが毎週入荷するのも、人気の理由のひとつだ

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

大子でレトロな音楽とカフェを楽しむ二日間

最寄りのICから【E6】常磐自動車道「那珂IC」を下車
1日目
まずは古民家レコード『MELLOW』へ。レコードのほか、CD、カセットテープ、昭和、平成の音楽雑誌も豊富だ。お気に入りの一品を見つけよう。
「daigo cafe」へ。名物のデミオムライスや、おいしいコーヒー、デザート、そして古き良き建築も楽しもう。 大子は温泉も有名で、温泉旅館やホテルがたくさんある。また近年はゲストハウスも増えている。予算に合わせて、好みの宿を探してみてはいかが。
古民家レコード『MELLOW』
daigo cafe
2日目
コーヒーと家具のお店hajimariへ。古民家を改装した、おしゃれなカフェ。自家焙煎のコーヒー豆のほか、店内ではレトロな家具も販売している。運が良ければ、古民家レコード『MELLOW』によるDJイベントに出くわすこともあるかもしれない!?
大子は山と川の自然豊かな町だ。季節に合わせて観瀑、ハイキング、りんご狩りなども楽しめる。
コーヒーと家具のお店hajimari

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。