未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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過疎の町に集うレコードファン! 古民家レコード屋がつくる新たなつながり

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.270 |10 Dec 2024
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#6レコードが繋いでくれた仲間たちへ

常連客のヒデさん(右)、湖口さん(左)とともにDJイベントを計画中の岡崎さん(中央)

さらに辺りが暗くなる頃、もうひとりの常連さんが訪れた。ヒデさんである。ヒデさんはなんと、隣の福島県いわき市から1時間かけて、休日である月曜日にやってくるのだという。やはりDJをしているヒデさんは、レコードを1万枚も持っているというのだから、驚きだ。みんな本当にレコードが大好きなのだ。今日も「最近買った」というたくさんのレコードを岡崎さんと湖口さんに見せながら、自分は店内のレコードを片っ端から物色している。

最近の大子町には、自然や観光に魅力を感じて移住し、カフェや宿、観光業を営む若者が少しずつ増えているのだという。そのなかのひとりが「一緒にイベントやりませんか」と声をかけてくれたのがきっかけで、岡崎さんたちはカフェやりんご園などで、DJイベントをするようになったのだ。

古民家をリノベーションしたdaigo cafe。岡崎さんが企画するDJイベントの会場だ。

大子駅にほど近い、町の中心部にあるその名も「daigo cafe」は、古民家を改装したおしゃれなカフェで、名物は大子のしゃも肉や卵、お米をつかった絶品のデミオムライスだ。多くの観光客が立ち寄ることで有名なスポットでもあるが、店長の河西さんさんはじめ、素敵なスタッフが切り盛りするこのカフェは、町の人たちからも愛されている。

「今回のイベントはジャズのDJイベントです」と岡崎さん。観光協会に勤める、ジャズが大好きな加藤さんもやってきた。加藤さんも次のイベントではDJをやるのだという。仕事帰りに立ち寄ったという、メロウの常連客アッコさんも加わって、イベントの打ち合わせは実に楽しそうに続いてる。

「『MELLOW』がオープンしたことで、50歳を過ぎても、新しい人脈、新しいともだちができて、こういうイベントができるようになったんだよね」と湖口さんたちは嬉しそうだ。

みんなの輪から少し離れたところで、岡崎さんはこういった。

「さっきモットーはない、っていったけど、俺のモットー、ひとつありました」

そして、こう続けた。

「この場所にきてもらったレコードが大好きな人たちに、いい気分になって帰ってもらいたいんです。常連客も、初めてきてくれた人にもね」

daigo cafe店長の河西さん(左端)はじめ、スタッフや常連客たちと岡崎さん(左から二番目)。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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