宿を始めて3年ほど経った2016年のある日、お茶菓子をプリンにしよう、と考えた。
「プリンってみんな好きじゃないですか。小さい子どもから老人まで、歯が悪くても食べられるし。その時は、妻が開発したプリンを出していました」
ここからあさひやでは、おもてなしプリンを出し続けた。評判はよく、経営も順調にいった。2016年には、楽天トラベルアワードの北陸地区リトルスター賞を受賞。それ以来、6回連続トータル8回の受賞に輝く、人気旅館となった。
コロナ禍で、3カ月ほど赤字になったものの、池田さんにはどこ吹く風。ピンチは、新しいことをするチャンスだと考え、宿泊客が減ったからこそできる宿の改装や設備投資を行った。
2021年10月18日、最大年間販売数2700万個の大ヒット商品「パステルなめらかプリン」の生みの親で、「プリンの神様」と呼ばれている所浩史シェフのセミナーが氷見市であり、参加した。「お客様がファンになる商品開発の極意」を教えてくれるというものだった。所浩史シェフは、地元の食材を使ったご当地プリンの開発を指南し、全国を回っていたのだ。
ちょうど同じ頃、氷見市の道の駅である、ひみ番屋街からも「空き物件があるけど、興味ない?」と声がかかっていた。
「所さんの話をきくうちに、道の駅に新しい観光スイーツを販売するお店があったら面白いな。旅館だけではなく、たくさんの方に食べてもらいたい、せっかくなら氷見の名物になるようなものにしたい、と思ったんです」
氷見といえば、海越しから見える立山連峰。池田さんはそのイメージで作ることにした。所さんに監修してもらい、新しいプリンができあがった。プリンの神様が監修した神の山をモチーフにしたプリン。それが「氷プリン」だ。