第一回の盆フェスは企画メンバーの友人や地元の人、滞在中のゲストなど、およそ120名ほどの参加者で賑わった。
どうせなら自分たちも楽しもうとつくったオリジナル曲の一つが、冒頭で歌詞を紹介した「どうらく音頭」だ。雄さん自らが作詞して、そこにささきりょうたさんが曲を載せた。外国人も楽しめるよう、英語バージョンもある。
「自分たちも楽しもう」の精神はさまざまな人を引き寄せた。歌手のシズリンこと故・おおたかしずるさんが自身の盆踊りソング「おせなか音頭」をひっさげて参加した年や、美大出身の4人組エンターテイメント集団「ズンマチャンゴ」が参加した年も。イマイチでもいいじゃないか、というメッセージを込めたマルシェ「イマ市」もコラボ開催した。参加者は年々増え、コロナ前は最大で延べ300人近くにもなった。
「なんか面白い体験をしたい、という人が集まってくるんです」という雄さんは、「あとはどれだけ楽しめるか」といたずらっぽく笑う。
年々関わる人達もいい感じに力が抜けてきて、打ち合わせもただの飲み会になった。でもそれが結果的に、その場その場で違うものができあがる盆フェスの醍醐味になっている。
話を聞いている最中、埼玉から来たという東出さん夫婦がカラフルな行灯をどっさり運び込んできた。夫の東出五国さんは日本におけるケーナの草分け的演奏者であり、絵も描く人だ。展覧会やケーナのイベントを通じて夫婦で読書の森に通うようになったという。今年は妻の美知子さんが、関わりのある障害者たちの絵を行灯にして盆フェスの小道を照らせないかと試行錯誤し、初めて実現した。
「ここでなにかしたいって思ってくれる人がいるのはありがたいよね」という恵さん。たまたま居合わせた人でも、ふわっと巻き込んでいくのが彼女の魅力だ。雄さんも「恵さんのおかげで、今の読書の森があるんです」と笑う。
滞在中のゲストが即興でオリジナルの盆踊りを踊ったり、櫓の周りに飾るちょうちんに絵を描いたり。プロモーションビデオをつくってアップしてくれる人もいる。
「盆フェス自体はたった一夜のことですが、その準備段階からいろんな人に関わってもらうのが楽しいんです」と雄さんは言う。
「そのプロセスがインターナショナルならいいなと思って」という恵さんが見せてくれたのは、スペイン語タイプの情熱的な盆フェスプロモーション動画。「みんないろいろ送ってくれるけど、You tubeへの上げ方がわかんないのよ」といいながらも、You tubeから視聴できる動画もいくつか残っていた。例えば、今でも年に何回か手紙でやりとりをするという精神科医の女性と音楽家の男性のイギリス人カップルがアップしたものや、フランス人がアップしたフランス語バージョンもある。
それぞれの人生のタイミングで、それぞれの濃淡で関わる人が読書の森にはたくさんいる。その人たちの心地よい距離感の象徴が盆フェスなのかもしれない。
「どうらく音頭」の作曲者、ささきりょうたさんは「人間も含めたここのつながりと、それを通じて有機的に形を変えていくなにかがここにはあって、それがここ(読書の森)の作品なんだと思っている」と語る。
りょうたさんにとって盆フェスに関わる魅力は、その有機的に形をかえていく何か。
「古くから残っている芸能って、形を変えちゃいけないような雰囲気があるでしょう。でも、新しく盆踊りの曲を作るっていう時に、みんなが酔っ払ってやんや言い合いながら形を変えていけるような、敢えてやわやわなものにすることで、楽しく継続することが可能になるんじゃないかなと思ったんです」