未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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じゅんさい摘み採り世界選手権、参戦記! “てっぺん”目指して沼に漕ぎ出す

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.262 |13 August 2024
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#5レジェンド誕生

沼の水深は50~60センチ程度。棒を突き立てて船を移動させる。(撮影:サオリス・ユーフラテス)
  • 僕が1時間で採取したじゅんさい。(撮影:サオリス・ユーフラテス)

1時間後、大会終了。各自が手持ちの棒で舟を操作し、スタート地点に戻る。参加者はじゅんさいを入れたバケツを持ち、計量する。結局、僕のバケツは半分にも満たなかった。ほかの人はどんな感じかな? と思って後ろを見ると、子ども連れのお母さんがバケツをふたつ持っている。とんでもない量だ! 思わず、話しかけた。

「すごい量ですね! (じゅんさい摘みを)やったことあったんですか?」

「何度か」

「今日はどちらから?」

「秋田市から来ました」

「コツはありますか?」

「まず、爪を伸ばして。上から見て、葉っぱをかき分けて。葉っぱを寄せないと下にあるのかわからないので」

「大会は初めて?」

「一昨年、初めて出ました。その時に優勝したんです」

「え、初出場で優勝! これはもしかしたら、二度目の優勝かもしれませんね」

「うふふ」

すべての計量が済むと、結果発表。僕は、この女性の実力に驚嘆することになる。

僕の後ろに並んでいた女性のバケツ。明らかに量が桁違い。(撮影:サオリス・ユーフラテス)

結果発表の場では、参加者のなかから最年少(5歳!)、最年長(岩手から参加の70代!)、遠方からの出場(佐賀、宮崎、大阪!)などが発表された。ふたりの外国人は、三種町のALT(外国語指導助手)でアメリカ出身とのこと。改めて、5歳から70代までが同じ舞台で競う世界選手権は稀有だと思う。選手宣誓をした兄弟には、大会に協賛するドレッシングメーカーから特別賞が贈られた。

最初は、美彩賞の発表で3人が壇上へ。続いて、僕も参加したソロの部。「3位ぐらいならワンチャンあるんじゃね?」と思っていた僕の甘すぎる考えは、木端微塵に打ち砕かれた。

3位の女性、1640グラム。

2位の女性、1722グラム。

優勝者は、僕が話を聞いた女性、二木南さんだった。

2連覇を達成したじゅんさい摘み採りのゴッドハンド、二木南さん(中央)(撮影:サオリス・ユーフラテス)

その記録を聞いて、のけぞった。2034グラム! 1時間で2キロを超えるじゅんさいを摘み採っていたのだ! それがどれだけすごいかというと、ペアの部の3位、2位の記録を上回り、優勝者の2251グラムとほぼ同量。ふたりで採るのと変わらぬスピード感と指先の感覚は、想像もつかない。2回出場して2度優勝。二木さんはもはやレジェンドと言っていいだろう。

ちなみに……。僕の記録は440グラムでソロの部20人中15位。てっぺんというより、底辺に近い順位だった。世界の頂点は果てしなく遠い。でも、満足度はとてつもなく高かった。箱舟に乗り、無我夢中でじゅんさいを摘み採る1時間は、思いのほか楽しい。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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