女性ふたりに話を聞いた後に声をかけた小学校6年生の少年も、本気だった。秋田市からおばあさん、お母さん、小学4年生の弟と一緒に来たという少年は、3回ほどじゅんさい摘み採りの体験をしたことがあるそうで、大会は初挑戦。
「なんで出場しようと思ったの?」
「とにかく自分はすごいぞって見せつけたい」
「ということは、優勝狙ってきたんですね」
「はい! 弟と一緒に出ます。刃がついている爪も買ってきました」
アツい。しかも、用意周到。
「優勝したら、こんなことがしたいとかありますか?」
「メダルとかもらえるなら、学校に持って行って表彰してもらいます」
「いっぱい採らなくても、きれいに摘み採れたら表彰されるみたいだけど、どっちを狙う?」
「両方っすね」
かっこいい! 12歳の2冠宣言に、僕は痺れた。そして、気づいた。二組に話しかけて、二組とも明らかに本気の優勝狙い。この会場にいる人たち、もしかしてみんなガチンコでてっぺんを取りにきてる!?
周囲を見渡せば、会場は一見、和やかな雰囲気に包まれている。しかし、胸の内では熱い炎をたぎらせていたのかもしれない……。 2冠宣言の少年は、弟と一緒に開会式で選手宣誓の大役を担っていた。ふたりの元気いっぱいの宣誓で、熱戦の火ぶたは切って落とされた。