……それにしても、である。すでに11回も開催されている「世界じゅんさい摘み採り選手権大会」、聞いたところによると、ソロの部、ペアの部ともに応募が殺到し、ソロの部の倍率は2.3倍、ペアの部は3.3倍だったそう。僕もほかの人と同じように応募したから、当選したのはラッキーだったのだ。
ほかにどんな人が参加しているのか気になって、大会が始まる前、女性のふたり組に話しかけた。秋田市から来たというふたりに、「何回目ですか?」と尋ねたら、その答えに驚いた。
「4回目です!」
ふたりとも仕事は飲食関係で、ひとりがたまたまじゅんさいの摘み採り体験をしたところ見事にはまり、友人に声をかけて大会に参加した。その初回で、意外な結果を出す。
「ビギナーズラックで、ペアの部で3位に入ったんです」 「それで味を占めて、調子に乗って出続けているんですけど、なかなか優勝できなくて(笑)」
最初に話しかけた参加者が、4回目の出場で過去にペアの部3位の実績があり、優勝狙い。今思えばこの時点で大会のレベルの高さが伺えるのだけど、この時の僕は自分が何気なく聞いた「じゅんさいって、どんなふうに食べるのがおいしんですか?」という質問の答えに興味津々だった。
「鍋ですね。たっぷり入れて、じゅんさい鍋」
「夏に鍋をするんですか?」
「じゅんさいは、この時期のごちそうだから」
「ああ、今が旬ですもんね!」
じゅんさいの収穫時期は5月から8月上旬で、旬は初夏。夏に鍋をしてじゅんさいを楽しんでいるなんて、秋田の人たちはずいぶんと風流な! うーん、食べてみたい! と大会前から食べるほうに意識を持っていかれた僕は、王者になる心構えが足りなかったと反省する。