岩手県盛岡市
ニューヨーク・タイムズで、「2023年に行くべき52カ所」に選ばれた岩手県盛岡市。このまちにある「みちのくあかね会」では、手染め、手紡ぎ、手織りで作られる「ホームスパン」が60年に渡り受け継がれてきた。身の回りのほとんどが機械で大量生産されるなか、手仕事の伝統を守り続ける職人たち。その姿を見に、私はまだ肌寒い盛岡のまちを訪れた。
最寄りのICから【E4】東北自動車道「盛岡IC」を下車
最寄りのICから【E4】東北自動車道「盛岡IC」を下車
トントン、ガチャン、ガーガー。
工房に入ると、いろいろな音が聞こえてきた。あたりには、身長170センチの私を超える背丈の機(はた/機織りする機械)がところ狭しと並んでいる。
私が訪れたのは、岩手県盛岡市にある「株式会社みちのくあかね会」。羊毛から糸を紡いで作る毛織物「ホームスパン」を製作・販売している会社だ。戦後、夫を失った女性たちの暮らしを支えるために設立された背景があり、創業から62年経つ今も、運営から製作、販売まで女性だけで行われている。
機械化が進むなか、職人が手織りで作り上げるマフラーってどんな感じだろう? 手にとってみると、思わず「えっ!」と声が出た。ガーゼのように軽いのだ。それでいて首に巻くと、ウール100%のあたたかさがある。
毎冬、分厚いマフラーをぐるぐる巻きにしては「肩こった......」と嘆いている私にはぴったりかもしれない。
ホームスパンの語源は、ホーム(家で)、スパン(紡ぐ)。岩手では大正から昭和にかけて農家の副業として定着したそうだ。日本のホームスパンの8割は岩手で生産され、地場産業として根付いている。
この日は、作り手であり、運営も担っている渡辺未央さんにホームスパンの製作現場を案内してもらった。
ふわふわとした羊毛の白い固まりが、鮮やかな色の糸、そして布になっていく様子は圧巻で、「たくさんの人に見てほしい」と思わずにはいられなかった。とはいえ、「手紡ぎ、手織り」と聞いてもピンとこない人は多いはず。私もここに来るまでは思っていた。
「機械で作ったものとなにが違うの?」