未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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一人ひとりが宿題を持ち帰る ライフの学校ってなんだろう?

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.242 |25 July 2023
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#8命の始まりも、終わりも、見えないところも

2023年春、田中さんは、福祉の先進国といわれる北欧の国々の視察に行った。人々が共に暮らして学び合う、デンマークの「フォルケホイスコーレ」という仕組みは、田中さんの指針のひとつ。その実際を見聞きし、いくつかの福祉施設を巡って、なにを思ったのだろうか。

「人生の終わりに対する哲学が、現代の日本とはだいぶ違うと痛感しました。私がしたい看取りのかたちが、デンマークの人々のなかに醸成されている。日本に置き換えていえば、本人が最後にラーメンを食べたいと言えば、家族も、施設も、どうぞっていうのが当たり前。『それが本当の自由、民主主義でしょ』って言ってたのがすごく印象的でした。

すでにそういう状況があるのは羨ましいし、私の14年間を返してって思いもありますよ(笑)。だからデンマークではライフの学校はいらないですよね。逆に日本では、認知症のお年寄りと暮らしたり、障害者と働くカフェのスタッフをしたりする人生の経験を得る仕組みが必要な気がします。特に閉塞感のある今の日本では、です。

それは少し先のことになるかもしれませんが、まずは地道に今やっている活動を続けていきたいですね。目の前のひとりのために行動していたら、まだ見ぬ誰かのためになる。そんな経験をたくさんしてきましたから」

さまざまな人が集うライフの学校(写真提供:ライフの学校)

死を見つめて、生き方を考える。さまざまな人と助け合いながら生きる。たくさんの人生と真っ直ぐに向き合ってきたライフの学校へ、ぜひ一度行ってみてほしい。きっと、自分や大切な人たちの人生に対する問いという大事な宿題を持ち帰れるはずだ。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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