おいしいコーヒーとプリンに後ろ髪を引かれながら、再び萩の風キャンパスに戻る。その道の途中にも、実はライフの学校の「みんなの畑」があって、野菜や米の栽培、今後はビールの原料となるホップの栽培も予定しているという。
「今日も午前中は草刈りしてましたよ。理事長っていっても、スタッフみんなががんばってくれてるから、私が主にやっているのは雑用ですよ」と田中さん。取り組みについて聞きながら「すごい」と感想をもらすとすぐに謙遜モードになるけれど、理事長然としているより、よっぽどいい姿なのではないかと思う。一緒に施設を巡っていると、大きくてはっきりと聞き取れる声で、すれ違うスタッフやパートナーと、明るく話す様子も印象的だった。
さて、萩の風キャンパスでは、週末プログラムの「LIFE BAR」を開催中だった。この日はスタッフの友人だという筋ジストロフィーの方のお話会。スクリーンに映し出されるスライドを見ながら、ゆっくりと語られる話を20人ほどの会場の人が聞いている。ゲストは毎回変わるが、アットホームな雰囲気で開催されるのは同じだ。
LIFE BARはじめ、「ライフストーリー学」「オープン看取り学」など、レギュラーの催しだけでもそのバリエーションはさまざま。ライフの学校のHPの「毎日開催しているプログラム」「週末開催しているプログラム」の項目には、複数のこれから参加できるイベントなどの告知がいくつも並んでいる。誰もが問い合わせフォームなどから申し込み可能で、無料や数百円で参加できるものが多い。
これらは専任のスタッフが企画しているのではなく、2割ほどの介護スタッフが兼任で行っているというのにも驚いた。
ここでは、日々の高齢者や障害者との関わりも、その日常を外にひらいていくことも、さまざまな人と生きること、死ぬことの悲喜交々をシェアしていくことが、まるっとつながっているのだ。田中さんが目指すかたちは、スタッフの働き方にも現れているのだと思った。