田中さんが運転する車で、萩の風キャンパスから数分の距離にある霞目(かすみのめ)キャンパスへ。ピンク色の外壁がかわいらしい2階建ての建物で、1階は5月にオープンしたばかりの「ウェルカム! カフェ」、2階はシェアハウスになっている。
ランチメニューは、秋田でレストランを営んでいた田中さんの父親が監修したとっておき。お菓子やコーヒーなどのラインナップも、「おいしい店」として通用するクオリティを保ちつつ、実はここは、障害者たちが支援を受けながら働くことができる、就労継続支援B型の事業所でもある。
現在は、10代から60代までのパートナー数人が通っていて、同時にケアマネージャーなどのスタッフもカフェ運営の修行中。スタッフにとっては、専門から大きく外れたようにみえる業務だが、皆揃いのエプロンをしていきいきと働いている。
そして、2階で暮らすのは海外から介護の仕事をするために来日しているスタッフたち。カフェでコーヒーを飲みつつ上を向くと、吹き抜け越しに2階に並ぶドアが見える。思いのほか間近に感じる生活の気配に、ちょっとドキドキ。そんな私の様子を察知してか、田中さんが口を開いた。
「住んでいるスタッフたちは、遠慮して息を潜めがちなんだよね。もっと生活感が外に伝わったって全然いいのにねえ」
何気なく踏み入れたカフェの扉の先に、さまざまな人の営みがある。それは、田中さんがライフの学校で実践し、さらにひろげようとしていることだ。
「ウェルカム!カフェを始めてすぐ来たお客さんが、なんと萩の風キャンパスのパートナーのご家族だったんですよ。何も知らずに入ってきて、『あら田中さん、この前は家族を看取ってくれてありがとう。ここもやってるの?』って。カフェとして誰でも来られる場所だけど、実は店員が専門性を持った相談員で、気軽に困りごとを相談できる。ここがライフの学校全体の入り口になればいいし、地域の交流地点になっていけばいいですね」