未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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一人ひとりが宿題を持ち帰る ライフの学校ってなんだろう?

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.242 |25 September 2023
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#32階の生活音が聞こえるカフェ

霞目キャンパス外観

田中さんが運転する車で、萩の風キャンパスから数分の距離にある霞目(かすみのめ)キャンパスへ。ピンク色の外壁がかわいらしい2階建ての建物で、1階は5月にオープンしたばかりの「ウェルカム! カフェ」、2階はシェアハウスになっている。

ランチメニューは、秋田でレストランを営んでいた田中さんの父親が監修したとっておき。お菓子やコーヒーなどのラインナップも、「おいしい店」として通用するクオリティを保ちつつ、実はここは、障害者たちが支援を受けながら働くことができる、就労継続支援B型の事業所でもある。

掲示板のような楽しさがあるガラスの壁
  • 抹茶のパンナコッタ
  • プリン

現在は、10代から60代までのパートナー数人が通っていて、同時にケアマネージャーなどのスタッフもカフェ運営の修行中。スタッフにとっては、専門から大きく外れたようにみえる業務だが、皆揃いのエプロンをしていきいきと働いている。

左から、渡辺果南さん(管理栄養士、就労支援センター職業訓練指導員)、守安里沙さん(社会福祉士、コミュニティマネージャー、就労支援センター生活支援員)、加藤夏美さん(管理栄養士)

そして、2階で暮らすのは海外から介護の仕事をするために来日しているスタッフたち。カフェでコーヒーを飲みつつ上を向くと、吹き抜け越しに2階に並ぶドアが見える。思いのほか間近に感じる生活の気配に、ちょっとドキドキ。そんな私の様子を察知してか、田中さんが口を開いた。

「住んでいるスタッフたちは、遠慮して息を潜めがちなんだよね。もっと生活感が外に伝わったって全然いいのにねえ」

何気なく踏み入れたカフェの扉の先に、さまざまな人の営みがある。それは、田中さんがライフの学校で実践し、さらにひろげようとしていることだ。

「ウェルカム!カフェを始めてすぐ来たお客さんが、なんと萩の風キャンパスのパートナーのご家族だったんですよ。何も知らずに入ってきて、『あら田中さん、この前は家族を看取ってくれてありがとう。ここもやってるの?』って。カフェとして誰でも来られる場所だけど、実は店員が専門性を持った相談員で、気軽に困りごとを相談できる。ここがライフの学校全体の入り口になればいいし、地域の交流地点になっていけばいいですね」

広々としたカフェの空間
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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