未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
216

異彩を放つミュージアム核心にあるもの ピュアなアートが生まれる場所

文= Numa
写真= Numa
未知の細道 No.216|25 August 2022
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#2社会から取り残された人々の芸術。

その日は八重樫道代さんの個展が開催されていた。彼女の緻密な構成に基づいた緻密にひしめき合う作品の数々を初めて目の当たりにする。ブラシマーカーを用いた「宇宙船」という代表作からは、手描き特有のゆらぎが紡ぎ出す色彩の極地に誘われると同時に、緻密なCG(コンピュターグラフィックス)がに吸い込まえるような、不思議な多幸感が同居していた。さらに「おりがみ」という彼女の代表作は岩手県立美術館に収蔵されていて、東京パラリンピックの閉会式では国旗入場の際に競技場に映し出された。

るんびにい美術館は「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」と呼ばれる芸術を中心に展示する小さなアートスペース。両者は「正規の美術教育を受けていない者による芸術」「既存の芸術や文化の潮流に影響を受けない表現」などと解釈され、日本では「エイブル・アート」という名称が用いられることもある。その範疇はプリミティブな民族美術や、芸術的素地のない子ども、素人の作品など多岐にわたる。なかでも多数を占めるのは精神的・知的に障害を持った人々の作品群だ。

伝統や流行にとらわれない、自由な表現。知識や技術にこだわらない、内から湧き上がる衝動。どこまでも純粋な、根源的な力強さを秘めたアートを前に、それらを初めて目にした人は心を揺さぶられ、大きな驚きと感動を心に刻む。それがこの芸術でしか表現できないであろう素晴らしさであり、凄みでもある。

前期と後期に分けて開催された八重樫道代展。色彩がひしめき合う絶頂期の作品群から、何も描けなくなった時期を経て再び絵と向き合うようになった近年の作品まで、どれも興味深いものばかり。
旅行やイベントなどの思い出、家族との絆が彼女のインスピレーションの源になっている。
©大西暢夫
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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