未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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岩手・一関。 いにしえの戦場(サウナ)から見えた景色。

文= Numa
写真= Numa
未知の細道 No.215|10 August 2022
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#5このままだからこそ面白い

はじめのうちは浅野さんの決断に半信半疑だったスタッフたちも、古戦場の評判が急上昇するにつれサウナに対する見方を変えていった。2021年の夏にはふたりの20代の若手社員が、古戦場オリジナルサウナグッズを積み込んで全国行脚の旅に出た。すでに岩手県内でトップの評価を受けていたサウナを全国にPRすべく各地の温浴施設を巡ってグッズを販売、その売上で熊本県まで旅をした。結果的にグッズは予想以上に売れ、同時に全国のサウナブームの熱気を目の当たりにし、アウフグースの技術を習得して約3ヶ月後に一関に帰還、まだ東北地方では珍しい、蒸気と熱風をサウナーに送る「熱波師」として活動を始めた。

「熱波熊谷」こと熊谷秋男さん。パート従業員として古戦場で15年働き、一関市内で酒屋を経営する。

さらにもうすぐ70歳になるという、レストランのホール担当である熊谷秋男さんも熱波師としてデビュー、さらなる話題を呼んだ。100℃を超える密室で汗だくになりながら全身を酷使するのは、年齢を考慮せずともかなりの重労働だ。「熱波熊谷です!70歳ですががんばりますのでよろしくお願いします!」と熊谷さんが口上を述べると、熱風を待つサウナーたちから「無理しないでください(笑)!」と絶妙の合いの手が入り場が一気に和む。浅野さんは、老若男女問わず人を楽しませることができる熊谷さんのキャラクターに賭けたのだ。

110度にもおよぶドライサウナと入浴客自らサウナストーンにアロマウォーターをかける事が可能な「セルフロウリュ」の導入、特許を取得したオリジナルのサウナハットを始めとするバラエティあふれるサウナグッズの製作、サウナ上がりの飲食を意味する「サ飯」の積極的なメニュー開発。古戦場は驚異的なペースで日々進化を繰り返し、岩手県のサウナカルチャーを牽引するホットスポットとしての地位を固めていった。

特許を取得した古戦場のオリジナルサウナハットはタオルを通す切り込みがあり、肌と喉を保護する。一関市のふるさと納税返礼品にもなっている。

そしてこの7月、クラウドファンディングで集めた資金を元に、男湯に漢方サウナを増設した。古戦場にはかつて評判の良い漢方湯があり、そのことを覚えている古いお客さんも少なくないことから、地元への恩返しの意味も込めてサウナで復活させた。

浅野さんは全国80ヶ所以上のサウナを視察する中で感じたことがあった。「立派で華やかで新しい施設は必要ない。訪れたサウナーたちは、積み重ねてきた歴史が醸し出すレトロさ、実家のような親しみやすさにワクワクしている。また常連さんたちにとってここのお風呂は生活の一部。古戦場はこのままだからこそ、面白い」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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