未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
193

北海道の川が鍛える珠玉の釣竿 バンブーロッドを持って、魚に会いに。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ・望月さん
未知の細道 No.193|10 September 2021
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#4北海道のポテンシャル

ヘンリーズフォークに通うようになってから、釣りの志向も変わった。ヘンリーズフォークは川と周辺環境を観察し、どんな虫がいて、魚はどの虫を好んで食べているのかを予測して「フライ」を選び、そのフライをなるべく自然に近い形で流して、狙いをつけた魚を釣る「マッチングザハッチ」という釣り方の本場。そこに通っているうちに、望月さんも魚と知恵比べをするような「マッチングザハッチ」に傾倒した。

「常に学ぶ姿勢を持って川に行き、仮説を立てて実践する。なんで成功したか、失敗したか考える。どういう風に立ち振る舞うべきか、想像を膨らませて行動する。そうして大きくてきれいなトラウトが釣れた時の喜びは、格別ですね」

望月さんが自宅兼工房を構える上富良野の風景。

こうしてどんどん釣りの魅力にはまっていった望月さんは2015年12月、39歳の時、妻子を連れて北海道の旭川に移住した。

「北海道はトラウト王国だと思いますし、世界に誇れる素晴らしいフィールドです。山岳地帯の急な流れから下流のゆったりした流れまであるし、トラウト(マス)以外の魚種も多い。もちろん海外にはもっとすごいところもありますが、アクセスが大変なんですよね。北海道なら車で1時間程度です。こんなにアクセスが良くて、多様なフィールドと多彩な魚種がコンパクトにまとまってるところはほかにありません」

北海道の川と魚に惚れ込んで本州からも多くのフライフィシャーが訪れる。(写真提供:望月さん)

望月さんが北海道に惹かれたのは、魚の「強さ」もある。本州と比べて川の流れの圧力が桁違いで、そこで暮らす魚も筋肉質になっており、「本州のマスとは比べものにならないほどの力」を感じるそうだ。その力強い魚でテストを重ねなければ、本当に良い竿は作れないという想いもあった。

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