未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
193

北海道の川が鍛える珠玉の釣竿 バンブーロッドを持って、魚に会いに。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ・望月さん
未知の細道 No.193|10 September 2021
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#2バンブーロッドへの憧れ

1976年、山梨県笛吹市で生まれた望月さんは、物心ついた時から釣りが好きだった。最初の頃は兄と一緒に近所の川で釣りをする程度だったが、小学校3、4年生の頃には地元の釣具屋が開催しているバス釣りコンテストに大人に混じって参加していた。フライフィッシングに出会ったのは、中学生の時。まだ一般的ではなくて、釣り人のなかでも「ハイカラな人たち」が始めた時期だった。

「竿を振るとラインがヒューっと伸びていくところをみて、きれいだな、美しいなと思って。先に兄がフライロッド(フライフィッシング用の竿)を持っていたから、こっそり借りて始めました。誰も教えてくれないから、フライフィッシングをしてる人たちの近くで見よう見まねでやってましたね」

高校入学と同時に東京に出て、それから文化服装学院で学び、ジュエリーデザイナーの仕事に就いた。その間も釣りの熱は冷めず、社会人になって最初のボーナスをはじめてのバンブーロッドに注ぎ込んだ。

「ずっとバンブーロッドへの憧れがあったから、嬉しかったですね。魚を(鉤に)かけていなすまでの楽しさが、普通の竿とぜんぜん違うんです。これを持って、もっと川に行きたいと思いました」

それからは、仕事が休みの日になると川でフライフィッシングに没頭する日々。別の会社に転職して収入が良くなってからは、バンブーロッドに限らず銘竿(めいかん)と言われるフライロッドを買い集めるようになった。それぞれ個性があり、使い心地が違う竿を楽しんでいるうちに、「自分だったらこう作る」という想いが湧いてきた。

30歳を過ぎた頃、ひと通りの道具を買い揃えて、バンブーロッドを自作。「そこそこの形になった」と川に持参して使ってみると、「道具としてはぜんぜんダメ」。この経験をきっかけに、「いいバンブーロッドを作りたい」という気持ちが大きくなっていった。

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