未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
186

『旅の思い出』編 海岸線を東から西へ 鳥取の写真集を作る旅

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.186 |25 May 2021
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#4夜の海へ

気高町の浜村温泉街というところで、映像ディレクターの荒尾極さんと、アーティストのじゅんこちゃんという若い夫婦のおうちに、数日泊まらせてもらった。荒尾さんたちの拠点「ことるり舎」も鳥取藝住祭に参加していたのだ。
ことるり舎はこの浜村温泉街で活動するアート団体で、ギャラリーの運営や、アートイベントの企画、映像制作などをしている。

主に海岸を撮影して写真集を作るつもりだという話をしたら、「近所のおじさんが時々、夜、飛び魚釣りに出るからその船に乗せてもらえるかも」と、荒尾さんが教えてくれた。それは是非乗ってみたい! と即答するとすぐに手配してくれて、荒尾さんも一緒に夜釣りへ行くことになった。

小さな船で夜の日本海へと、静かに滑り出す。といっても湾内から遠く離れるようなことはなかったように思う。船を出してくれたおじさんは本職の漁師というより、半分趣味のような感じで、こうして時々、近場で夜釣りに出るらしい。

海面に灯りをあて、その光に誘われて近寄ってくるトビウオを網で掬う。光に照らされて、澄んだ海が深いところまでよく見える。時々、同じような小さな船がすーっと寄ってきて、船長同士で二言三言、声を掛け合い、また互いの船がすーっと離れていく。
私は写真を撮るのに夢中で、自分がトビウオ釣りをしたのかどうかは、まったく覚えていない。

あくる日、荒尾さんとじゅんちゃんにお礼を行って、また次の町へと向かった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。