気高町の浜村温泉街というところで、映像ディレクターの荒尾極さんと、アーティストのじゅんこちゃんという若い夫婦のおうちに、数日泊まらせてもらった。荒尾さんたちの拠点「ことるり舎」も鳥取藝住祭に参加していたのだ。
ことるり舎はこの浜村温泉街で活動するアート団体で、ギャラリーの運営や、アートイベントの企画、映像制作などをしている。
主に海岸を撮影して写真集を作るつもりだという話をしたら、「近所のおじさんが時々、夜、飛び魚釣りに出るからその船に乗せてもらえるかも」と、荒尾さんが教えてくれた。それは是非乗ってみたい! と即答するとすぐに手配してくれて、荒尾さんも一緒に夜釣りへ行くことになった。
小さな船で夜の日本海へと、静かに滑り出す。といっても湾内から遠く離れるようなことはなかったように思う。船を出してくれたおじさんは本職の漁師というより、半分趣味のような感じで、こうして時々、近場で夜釣りに出るらしい。
海面に灯りをあて、その光に誘われて近寄ってくるトビウオを網で掬う。光に照らされて、澄んだ海が深いところまでよく見える。時々、同じような小さな船がすーっと寄ってきて、船長同士で二言三言、声を掛け合い、また互いの船がすーっと離れていく。
私は写真を撮るのに夢中で、自分がトビウオ釣りをしたのかどうかは、まったく覚えていない。
あくる日、荒尾さんとじゅんちゃんにお礼を行って、また次の町へと向かった。