未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
181

『旅の思い出』編 食べ物、人、現実逃避。 あなたの旅の「言い訳」はなんですか?

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.181 |10 March 2021
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#3特に何も起きなかった忘れられない旅

小さい赤ちゃんを連れて旅に出るのは、なかなか大変だけど楽しい。

さて、水信玄餅である。

私たちの番号は「98」!朝からたくさんの人が並んでいた。

友人の運転のおかげで10時前に到着した私たちは、先着順で渡される引換券を受け取った。どのくらい待つかはわからないけれど、これでひとまず安心である。50人はいたであろう他のお客さんと同様に、横にあるお店でお土産の信玄餅や和菓子を購入しながら待った。意外と早く30分ほどで呼ばれ、いざ、幻の和スイーツ!

おいしいお茶と一緒に提供された水信玄餅。つるりと食べれてしまった。

目の前に現れた水信玄餅は意外とこじんまりとしていたけれど、透明な寒天に光が反射してキラキラしているのは写真のとおりだった。同じ皿に添えられた、黒蜜ときな粉をつけて食べる。味は……あまりしなかったと記憶している。黒蜜やきな粉が絡んで、その味で「信玄餅感」はあるので、どちらかと言うとつるっとした食感を楽しむものなのかもしれない。味よりも見た目の美しさにテンションが上がるスイーツであることは、海外からの友人たちを見れば明らかだった。

もちろん写真撮影は忘れない。

私たちはひと通り写真を撮り、ペロリと水信玄餅を平らげて店を出た。時間にして、15分もいなかったかもしれない。実は今、写真を見返してもその味や食感がうまく思い出せないでいる。まさに「幻の和スイーツ」と言えよう。

帰りは、直前に日本の免許が取れた夫に運転してもらい、無事に帰宅。結局、私はハンドルを握ることなく、友人を水信玄餅まで連れて行くことができた満足感に浸っていた。次にリクエストがあったときには、私の運転で連れていってあげたい。

この旅、本当になにをしたわけでもない。ミニバンを借りて、みんなで好きな音楽をかけながら山梨へ向かい、水信玄餅とほうとうを食べて帰宅した。せっかく山梨に行くのであれば、あれもこれも詰め込めたかもしれないけれど、私たちはみんな「楽しかったね」と写真を見返していた。

赤ちゃんでも食べれる、幻の和スイーツ。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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