未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
180

青森県むつ市

本州の極地を目指してロードトリップに出る。厳しい自然、素朴な人情、不可思議な文化の痕跡。この国の原風景が残された土地で、俺たちが出合ったものは?

文= Numa
写真= Numa
未知の細道 No.180 |25 December 2020
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
青森県むつ市

最寄りのICから【E4A】第二みちのく有料道路「三沢十和田下田IC」を下車

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#1平泉の巨石

日本最大の規模を誇るという、崖にへばりつくように建てられたお堂。

麗らかな春がもうすぐ訪れるであろう2018年3月の中頃、超極暖ヒートテックと厚手のダウンジャケットを着込み、俺は東京を離れた。とある取材で東北を旅することになったのだ。岩手県の北上で仕事仲間のKとSに落ち合う。そこから先は東北出身で土地勘のあるSがハンドルを握り、まずは南下して平泉に向かった。

気持ちが「北へ、北へ」と高ぶっていた俺は、肩透かしを食らう。Sが最初に案内してくれたのは、巨石だった。いきなりシブすぎる。「平泉は初めてでさ?」とこっちがアピールしているのに、「岩窟寺院と磨崖仏を見よう」と、中尊寺の前をすーっと通り過ぎて達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)へ。

けれどこの寺院、Sが言うとおりたしかに面白い。坂上田村麻呂が征夷の記念に毘沙門天を祀って以来、1200年の歴史を持つとされる岩窟。火事や戦禍で何度も消失したものの、奥州藤原氏や源氏、伊達家らによって守られて現在に至ったという聖地だ。岩肌が露出している部分だけでも幅およそ150メートル、最大標高差35メートル。岩屋の左手には大きな磨崖仏が刻まれている。

「東北には謎の巨石が多い」とSが説明する。弁慶が持ち上げて乗せたとも、人為的なドルメン(支石墓)ではないかとも言われる、宇宙戦艦のような遠野の「続石」、鬼の手形伝説が残る3つの巨大な花崗岩が鎮座する盛岡の「三ツ石神社」、方位石、太陽石、星座石、鏡石などが置かれ、「5万年前のピラミッド」と言われる青森県新郷村の「大石神ピラミッド」などなど。いわゆる日本史では登場することが認められない、想像外の歴史が東北という異境に横たわっていたのかもしれない。そうと考えると背筋がゾクッとする。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。