未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
180

中年男3人、北へ。 ニッポン最果て極楽紀行

文= ヌマ
写真= ヌマ
未知の細道 No.180 |25 December 2020
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#4あの世とこの世。

「オシラサマアソバセ」のために着飾ったオシラサマを、イタコが両手に持ち上下左右させながら祈祷を行う。

翌日、さらに北へと向かった。せっかくだから冷麺を食べようと盛岡で東北自動車道を降りる。コラーゲンたっぷりの牛骨スープに抜群のコシと滑らかさを持った麺、そしてキムチの酸味。勢い余って注文した「激辛」は驚くほど鮮やかな赤色だった。ビリビリと舌を刺激する強烈な味覚が、俺を朝鮮半島へとトリップさせる。その昔、極寒の2月のソウルへ友達を訪ねたときのこと。クソ寒い中で彼は俺に冷麺を食べさせた。「むっちゃ寒い日にキンキンに冷えた冷麺を食べのるが通なんだぜ」。以来、俺は冬に食べる冷麺が好きになった。

ズルズルと麺をすすりながら、俺たちは旅の終着地について話し合った。津軽海峡で冬景色を眺めるか、恐山で極楽浄土の風景を眺めるか。3人の意見はすぐに一致した。「極楽浄土でしょ!」。

キレイに雪化粧をした岩手山に見送られ、俺たちは青森県に入った。取材のアポイントを入れた八戸へ。ひと昔前まで各地区にひとりいたという「イタコのメッカ」で、南部イタコ第6世代に当たる松田広子さんにインタビューを行うのだ。

イタコとは、特別な力を得て神仏と繋がる女性たちのこと。年に2回行われる恐山菩提寺の大祭に集結する彼女たちは、普段はそれぞれの地元で口寄せやお祓いを行っている。遠野で遭遇したオシラサマを供養する神事「オシラサマアソバセ」を司るのも彼女たちの役目だ。

地域住民の悩みに寄り添うカウンセラー、そして仏事と神事を執り行うシャーマン。「かか様」と呼ばれて地域で親しまれていた、とても身近な存在なのだ。

松田さんに「あの世」と「この世」について聞いた。「その2つはパラレルワールのように存在します。今を生きる人にとっての癒やしの存在が『あの世』。この地方の人々は、思いを寄せる亡き人の霊魂を呼び寄せ、その声を聞くことで、生きる勇気を得てきたのです」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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