ふらふら一人でさまよっていると、町の人が「宝昌寺で見るといいよ」と声をかけてくれ、ひとり寺へ向かう。私は完全なる朝型人間でほとんど夜に出かけることがないものだから、「夜に出歩いている」というだけで、すでに気分は高揚していた。
20時、寺には人だかりができていて、円陣になった観衆の中心で、獅子が舞う姿を見る。舞う、跳ねる、回る……激しい動きに目が釘付け。気づけば20分ほど止まることなく舞い続ける獅子の胆力よ!
「こ、これ、プロとかがいるわけではなく、普通に町の人が踊っているんですよね?」と近くにいた人に思わず聞いてしまったほどだ。聞けば、本番前の2週間、子どもは毎日1時間ほど、大人は子どもの練習が終了した時間から練習を積むそうだ。
騎馬武者に扮した小さな子どものかわいらしいこと、荒々しい若者の騎馬武者、色気も感じる踊り、笑いが起こる漫才……。多様な要素があり、見飽きることがない。
でも、転じて演者について考えてみるとすごく過酷。小さい子は3歳頃から参加するそうだが、2日続けて歩き踊り続けるなんて、自分の幼い頃や自分の子の今を考えると絶対に無理! だからこそ、参加する子どもも必死なら、家族も必死だ。翌日、練り歩き、踊る子どもの側にそっといて、休憩とみれば声をかけ、飲み物を与えたり、休ませたり、家族一丸となってこの日に挑んでる様子が見たときには、完全に親心に感情移入した。
大人の男性の騎馬隊の姿にも驚いた。踊りのときに肩当てが頬に当たるほど激しく舞うのだけれど、しだいに頬は赤くなって、血がにじんでいる人もいるではないか! 「ひぇ~痛そうだ」と驚いていると、「そうそう、明日の夜にはみんなもっと血流してるよ」という声が返ってきた。