未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
176

『旅の思い出』編 異世界へと誘われる ほとばしる熱気と色とりどりの藤琴豊作踊り

文= 小野民
写真= 船橋陽馬@秋田県藤里町(#2、#6以外)
未知の細道 No.176 |25 December 2020
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#2藤里町との出会い

ドライブ中に立ち寄った小さな滝。藤里ではいたるところで水の気配を感じる

秋田県の藤里町のことは、仕事で行くことになるまで知らなかった。秋田県の最北端に位置し、青森との県境は世界遺産にも登録されている白神山地がそびえている。人口は3100人ほど(2020年現在)で、私が通った2017年よりもまた減っていることを今知って、地方の厳しい現実を突きつけられている。

「コンビニも駅もないんだよ」と初めて行くときに言われたが、それはむしろ魅力かもしれない。東京から最寄りの空港大館能代空港まで空路で1時間余り。そこから車で30分の距離は、ある意味便利、と私は思う。

2017年、藤里町が町おこしのためのさまざまな取り組みを模索するなかで、編集者・ライターとしてその様子を発信する役目を背負って、数回ほど藤里町に足を運んだ。

移住者のためのお試し住宅の町の紹介文には「町民全員が家族のように暮らしている」とあった。最初、「どういうこと?」と思っていたが、次第にその感じもわかるようになった。なぜなら、数度通ううちに、私は町民の100分の1以上の人に、「こんにちは。初めまして」とあいさつ済みだと気がついたから。町を歩いていると知っている顔にたくさん会う。この距離感が人口3000人~3500人の規模のなせる心地良さなのだとしたら、合併を重ねて大きくなった市町村が失ったものの大きさにため息が出る。

藤里町に向かう時に降り立つ、大館能代空港にて。私の出張は子連れのこともしばしば
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。