直売所が起点となり始まった包括的な農村を伝える活動は、全国の優れた事例に贈られる『地域再生大賞』の最優秀賞を受賞。『大館市まるごと体験推進協議会』として、JTB交流創造賞にも輝き、全国的に注目されている。石垣さん自身も講演会や出張教室などに呼ばれ、大館を飛び出した活動も増えた。
「私だけでなく、いろんな会員が食育の講師などとして活躍していますよ。自分の孫さんの学校へ行くこともあるんです。そうしたら孫さんが『ばあちゃんが先生で来た!』って言ってくれて、ばあちゃんたちは誇らしくなる。農家の母さん方は注目されることが心の栄養になって、それが生きがい、がんばる力になるんですよ」(石垣さん)
ふだんは、「どこそこの母さん」や「おい」と呼ばれてきた母さんたちも、人前に出たら「◯◯さん」と呼ばれるようになったことに、石垣さんは驚いた。20年前には冷ややかだった男性陣との関係も大きく変化。「お父さんが直売所の品揃えを気にしてくれたり、母さんが父さんに『なんか買ってほしいものあるか。軽トラがほしいか』なんて言えるようになったんだから、変わったもんだ」と石垣さんは、豪快に笑う。
「まだ来てたんせー(またきてね)」
笑顔で見送ってくれる陽気な母さんたち。その裏には、逆風とそれに負けない団結があったことを知ると、笑顔はますます眩しい。母さんたちの築いたものは、きっとこれからの世の中を生きていく女性たちをも勇気づけてくれるはずだ。