直売所への風当たりは強かった。面積も広く数十万円の家賃が必要な場所でのスタートに、「1ヶ月で潰れる」という風評が女性たちの耳には届いた。
「でもね、絶対的な自信があったの。移動販売で直売の手応えはあったしね」。それから20年、赤字に苦しんだ年もあったが直売所は続いている。
赤字の原因も、いわば「母さんらしさ」によるもの。例えば、2015年に株式会社化する際にパートさんを正社員に据え、多いときには30人もの社員を抱えて人件費が膨大になった。人件費を削ることには苦渋の決断を伴ったが、弁当部門や食堂部門を切り分けたり、ボランティアの制度を取り入れるなどして、いまは赤字は解消している。
月に1回はメンバー全員が参加する会議、毎年年末には総会を行い、運営について話し合う。「役員の給料について、売り上げ報奨金のパーセンテージについて、お金のこともしっかり話し合う。熱気がありますよ。でも総会のあとは、出し物もある宴会を盛大にやるんですよ」
「常に自分たちの足跡を検証して、失敗から立ち直ってきた」と言う石垣さん。良きパートナーである税理士さんの意見を仰いで、経営について学び続けてきた。
「ほかの直売所だと売り場を取り合うこともあるみたいだけど、私たちは譲り合う。『私は出すものないから、今はあなたが置いて』と言い合って、みんなで直売所全体の売り上げを確保しようとしているんです。ただ、高齢化でメンバーが減っていて、どうやって次世代に継いでいくかがこれからの課題ですね」
高齢化は地域全体の課題でもある。かつて店まで足を運んでくれた人々のなかには、出かけるのが大変になった人もいる。そのため、現在は車に商品を積んで市内各地に届ける出張販売サービスが伸びているという。