未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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88人の団結が生んだ秋田の小さな奇跡! 年商2億超えの直売所「陽気な母さんの店」の20年

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.159 |10 April 2020 2020
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#5お客さんとつながり続ける工夫

話を聞いている間にお昼になり、「ごはん食べておいで?」ということで、私はおすすめのうどんをいただくことに。

ほうれん草を練り込んだ手打ちうどんは、見た目にも華やかでとてもおいしかった。添えられたふきのとう味噌のごはんもペロリ。聞けばふきのとう味噌は人気商品だそう。

店内を歩いてみると、うど、春キャベツ、人参など、旬の野菜が並ぶが、ちょっとおもしろいラインナップにも目が止まる。新鮮な野菜の横にあって目を引いたのは、多種多様な乾燥野菜。売れ残った野菜は無駄にしないために乾燥野菜にすることが多いそう。

もったいない、無駄にしない精神は充実した加工製品にもあらわれる。お惣菜や漬物のほか、”陽気な母さん印”のりんごジュース、ドレッシングなども。

そして、わたしが特に心を動かされたのは、全国への宅配サービス。毎月25日、3,500円(送料込)でその時期に店頭に並ぶものや加工品の詰め合わせに野菜のレシピをつけて発送するという。関東圏を中心に毎月110件前後、年末は200件近くの注文がある。地元の人が家を出た子どもや親戚に送ったり、かつて店に来たことのある人の注文があるそうだ。

実際に3月発送予定の品々を入れる箱詰めの様子を見せてもらったら、ネギ、うど、あさつき、じゃがいも、水菜、キャベツ、比内地鶏の鶏めしの素、ふき味噌など、バラエティ豊かな一箱に。来月の予定と野菜のレシピを同封して発送する。私もひとつ注文。これからも、折に触れて大館の旬を味わおうと思う。

「野菜を売っているだけじゃダメで、農業ってこういうものだよって知ってもらったり、大館の魅力を伝えることもわたしたちの活動です。減農薬で育てるから虫食いがあったり、形が悪かったりするのも、それが自然なこと。直売所を発信基地にして、『伝えること』をがんばっていきたい。それがこれからの農業を守ることにもつながるはずです」(石垣さん)

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。