北海道上川郡上川町
北海道有数の温泉地、層雲峡。厳しい寒さでも知られるこの土地で、真冬に12万人を集めるお祭りがあると知った。決してアクセスが良いわけでもないのに、なにがそれだけの人を惹きつけるのだろう。その理由を知りたくて、氷点下のなか、層雲峡に向かった。
最寄りのICから【E5】道央自動車道「旭川北IC」を下車
最寄りのICから【E5】道央自動車道「旭川北IC」を下車
降ったり、止んだりしていた雪が、いつからか、本格的に降り始めていた。風に煽られた花びらのように、雪が舞い散る。
2月3日の月曜日、気温はマイナス7度、時刻は夜8時29分、普段なら、なにか用事がない限り、この天候、この時間帯に出歩く人はいないだろう。でも、僕の前には厚着をしてモコモコに膨れ上がった大勢の人たちがいた。数えたわけではないけれど、100人を優に超えているのではないだろうか。この日、僕は「第45回層雲峡温泉 氷瀑まつり」に来ていた。ステージ上のスタッフからの呼びかけで、カウントダウンが始まる。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……」
声を合わせて「ゼロー!!!」と叫んだ瞬間、ヒューーーーッという音がして、数秒後にドンッと花火が弾けた。観客から「ワー!」と歓声が沸く。花火といえば夏というイメージがあったけど、冬の雪夜、キリッとした寒さのなかで観る花火はまた違う趣があった。
雪原のなかに一輪の花を見つけたような違和感とワクワク感とでも言おうか……なんて余韻に浸っていたら、会場の雰囲気がガラリと変わった。この日のラストイベント、餅まきが始まったのだ。
ステージ上から、地元・上川町産のもち米で作る紅白の餅が、こんなに!? と驚くほどたくさん放り投げられる。それをキャッチしようと会場のお客さんたちがグイグイと手を伸ばし、餅が飛んでくるたびにキャーッとかオオーッとかアーーッという声が響き渡る。
餅の大半は下に落ちるから、腰をかがめて餅を拾おうとする人と、空中キャッチを目論む人、老若男女が入り乱れて、花火の余韻は吹き飛んだ。なかには、そんなにどうするの!? と聞きたくなるほど大量の餅を抱えているツワモノもいて、思わず笑ってしまった。
それにしても、と思う。いくらまつりの期間中とはいえ、月曜の夜にこんなに人がいるとは思わなかった!