そして、氷瀑まつりの目玉といえば花火。僕が取材に行った日も20時半から打ち上げが始まるとあって、20時過ぎからどんどん観光客が増えていった。その日はけっこう雪が降っていたし、時間も10分ほどだったけど十分に楽しめた。雪が降っていない月夜の晩もきれいだろうなあ。
花火の後、バーゲンセール初日のような盛り上がりを見せた餅まきも終わったタイミングで、小さな子どもふたりを連れたお母さんに話しかけた。台湾から来たという旅行者だったからたどたどしい英語で質問すると、素敵な笑顔で答えてくれた。
―北海道は初めて? お母さん「私は3回目。でも子どもたちは初めてなの!」
―3回目!北海道が好きなんですね! お母さん「イエス、イエス!」
―このお祭りは初めて? お母さん「そう、初めて来たわ」
―どうだった? 楽しめた? お母さん「イエス! 子どもたちは氷の滑り台が楽しかったみたい。私は雪のなかで花火を観るのが初めてで、すごくよかった!」
ありがとう、バイバイ! と互いに手を振って別れた。その時に気づいた。お母さんの手に、お餅が3つ。母は強し。
決して行きやすい場所じゃない冬の層雲峡のお祭りに、なんで12万人も? という疑問が、この取材のきっかけだった。氷瀑まつりからは小さな子どもから高齢者まで、来場者みんなに楽しんでもらおう、思い出を作ってもらおうという心遣いと手作りの温かみが伝わった。それこそ、駐車場の一角から始まった小さなお祭りが45年続き、2カ月で12万人を呼び込むようになった最大の理由という気がした。