旭川駅前のバス停で、いわゆる路線バスに乗っておよそ2時間。途中で山と山の間を走る道に入り、グングン進んでいった終点が、温泉地として有名な層雲峡だ。
ちなみに、層雲峡のあたりは1915年(大正4年)に塩谷さんという人が最初の温泉宿を開いたこともあり、もともと塩谷温泉と言われていたそう。ところが1921年(大正10年)に明治の文豪、大町桂月が塩谷温泉を訪れた際、この地域の部落がアイヌ語で「滝の多い川」を意味する「双雲別(そううんべつ)」と呼ばれていたことを知り、「層雲峡」と名付けたそうだ。さすが文豪。塩谷温泉より層雲峡のほうが、響きも字面も秘境感がある。
標高600メートルの山間にある層雲峡は荒々しい山に挟まれた大渓谷で風光明媚、大雪山系のひとつである黒岳への登山口もあるため、北海道有数の温泉街として発展した。しかし、課題がひとつ。層雲峡観光協会の事務局長、中島慎一さんによると、雪深い冬の時期は旅行者が激減し、「観光客よりも従業員のほうが多い」状態になっていたそうだ。冬も層雲峡に来てほしい。町の人たちの願いを込めて始まったのが、氷瀑まつりだった。
「第1回は1975年ですね。北海道タイムスという新聞社(1998年に廃刊)の方から造形作家の竹中さんを紹介してもらって、そこから氷瀑まつりが始まったんです」