さて「年縞」とはいったいなんだろうか?私がその言葉を知ったのは、今年の春。
とある地質学の講義を聴きに行ったときのことだった。
福井県にある国の名勝、三方五湖は、日本海と山を隔てて5つの湖が繋がりながら広がる絶景だ。その一つ、水月湖の湖底の堆積物が「年縞」と呼ばれるものだ。それは幾つかの奇跡的な条件が重なり、一年に明暗一対の縞模様が形成され、合計7万年分の縞が乱れることなく、積み重なっているのだという。この縞の重なりはなんと45メートルにも及ぶ。
この世界的にも珍しい年縞は2012年にその価値が世界的に証明され、今にわかに注目されているのだ。1年ずつの年縞が7万年前までしっかりと残されているということは、過去の気候変動や自然災害など、7万年間の地球の歴史を「一年ごと」に知る重要な材料となる、ということ。
さらにこの年縞は45メートル分、そっくりとボーリングされ、その実物が特殊加工されて、昨年度オープンしたばかりの「年縞博物館」に展示されているのだという。
これまで地層や地形の写真を撮りに出かけていた私は、この講義を聞いてすっかり水月湖と年縞博物館に行きたくなってしまった。そうしてここ若狭町までやってきたわけだ。しかし三方五湖は広い。今日はひとまず、水月湖とその周辺をドライブしてみることにしたのである。
さきほどのくびれの手前の湖が三方湖で、それに続いて水月湖があったわけだ。
ここはどうやら釣りのポイントのようで、山を一つ越えて滋賀県からやってきたというおじさんたちが鯉釣りをしていた。三方湖には、伝統的な船小屋もあった。
さらに車を走らせると、カーブの山道が続く。塩坂越トンネルを抜けるとそこには絶景がひろがっていた。これは海だ、日本海の若狭湾だ!
このトンネルのすぐ裏側には水月湖があるなんてちょっと想像が追いつかない。なんだか不思議な感覚だった。山と湖を過ぎてきたばかりなのに、今こうして目の前には雄大な海がある。波の音を聞きながら、こんな地形があるんだ! と思った。