未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
146

「わくわく!」で世の中を照らす
「美術館らしくない美術館」
猪苗代 はじまりの美術館

文= 川内 有緒
写真= 川内 有緒、はじまりの美術館(一部写真提供)
未知の細道 No.146 |25 September 2019
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#7わくわくなおもわく

さて、いよいよ現在実施中の企画展「わくわくなおもわく」(〜11/10)を見にいこうではないか。
わくわくなおもわく。
その軽やかな展示タイトルにこめた思いを、美術館スタッフのひとり、小林竜也(元シェフ!)さんは、こんな風に説明する。
「この企画展は『共同性』がテーマです。なにかひとつのことを誰かと一緒に共同で成そうとするときに、実はある人の思惑と別の人の思惑は異なっているかもしれません。しかし、それぞれの思惑が良い方向に向かった時、ポジティブな相乗効果がうまれ、ひとりでは成し得ない面白いことがおきます。展覧会ではそんな『わくわくなおもわく』を感じる作家や作品、プロジェクトなどを紹介しております」
多様なバックグラウンドの人がフラットに関わる、この美術館らしい企画である。それでは、いざ靴を脱いで展示室へ!

……とその前に、ここで(本当にいまさらで恐縮だが)今日は、ふたりの友人が作品鑑賞に合流していたので、紹介したい。友人・その1は、マイティ(水戸芸術館スタッフ)。私が岡部さんや大政さんと話している間、ずっと娘のナナと一緒に絵を描いていてくれていたのだ(ありがとう!)
そして、友人・その2は、「全盲の美術鑑賞家」として全国の美術館を巡っている白鳥建二さんである。

作品を見るマイティと白鳥さん。写真に写っている作品は小山田徹+香月《お父ちゃん弁当》
作品を見るマイティと白鳥さん。写真に写っている作品は小山田徹+香月《お父ちゃん弁当》

白鳥さんは、年に何十回というハイペースで美術館に通うコアな美術ラヴァー。趣味が一致している私たちは、だいたい月イチのペースで一緒に美術館に行っている。全盲の白鳥さんがどうやってアートを楽しむかといえば、「言葉」で「見る」のだ。私やマイティなど、見える人たちが作品の描写や感想を言い、白鳥さんが質問を投げかけ……と、自由に会話をしながら一緒に鑑賞する。
というわけで今回は、私、娘、マイティ、白鳥さんという異色メンバーでの鑑賞タイムがスタート。これはこれで、ある種の「わくわくなおもわく」とも言えるのかもしれない。ナナは美術館が好きではないし、白鳥さんは目が見えない。普通ならばとうてい美術鑑賞向きとは言えない組み合わせだ。その異なる人間の組み合わせが生み出す「わくわくなおもわく」はいかなるものか? せっかくなので、ダイジェストで鑑賞の様子をお送りしたい。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。