まずこれが、最初に私たちが完全にロックオンされた作品だ。
ドールハウスとブロックで遊んでいるようにしか見えないかもしれないが、これらも《搬入プロジェクトのための習作セット》(悪魔のしるし)という作品の一部である。
同じ空間には映像が展示されており、そこには大勢の人々が巨大な物体を建物に運び込もうと奮闘する様子が映し出される。
いったいなにを搬入してるんだろう?
首をひねっていると、大政さんが「これはですね……」と助け舟を出してくれた。説明を聞いてみると、これが清々しいほどにわけのわからんプロジェクトなのだ。《搬入プロジェクト》というタイトルが示唆する通り、作家がわざわざ建物に合わせてやたらと複雑な物体を作りあげ、無事に搬入できるかどうかを試してみる、というものだ。
「うわー、搬入するだけか。無意味だけど面白い!人間の本能に訴えかけるのかな。何が面白のかなって考えるとよくわからないけれど、なんか惹かれるよね。これ考えたひとすごいわ、搬入だけしてみるって!」(有緒)
「大阪のだんじり祭りで、道幅すれすれのところを通るのと同じようなスリルかなあ!」(マイティ)
「そうかもしれないね。引越しの時もさ、この角度なら冷蔵庫が入るかも、入ったー!っていう瞬間、すごく嬉しいよね」(有緒)
スクリーンの前には、色とりどりのブロックと「はじまりの美術館」の模型が置いてある。どうやらブロックを利用して、自分たちでも変わった造形物を作りあげ、プチ「搬入プロジェクト」をやってみませんか、というお誘いらしい。ようし!
さっそくナナは、「ママ、見てー! こうやってどんどんはめていくと、すごく長くなるよ」と一心不乱にブロックを組み合わせ始めた。
白鳥さんも「俺もこういうの、ハマりそう。家に欲しいかも」と複雑な形を作り上げる。
私たち四人は床に座りこみ、30分くらいブロックを繋げ続けた。